教育と社会を考える

アクセスカウンタ

zoom RSS オランダの社会と文化 日本と比較しながら(28)

<<   作成日時 : 2006/07/28 21:41   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 143 / トラックバック 1 / コメント 0

 オランダの学校制度について簡単に説明しておこう。義務教育は5歳からだが4歳から入学可能である。つまり、5歳になる前の1年間の適当な時期に入学できるわけだ。日本でも早生まれとそうでない者との間の成長の違いが大きいことが問題になるが、それをうまく解決できるやり方だ。義務教育年齢が近づくとその旨が役所から知らされ、親はどの学校に入れるかを調べ始める。オランダには日本のような通学区はまったく存在しないので、学校を指定されることはなく、選択は権利であると同時に義務でもある。選択しないと入る学校が決まらない。学校はそれぞれ教育方針があり、宗教的な教育が認められているので、宗教的な理由で入学を断ることは認められているが、それ以外の理由で入学を断ることは認められていない。
教育熱心な親は子どもが小さい頃から学校に登録するから、人気のある学校ではもちろん定員を超過する。その場合は「先着順」である。抽選や選抜は行われない。だから、早くからウェイティングリストに載せるわけだ。私のオランダの友人は0歳のときに登録したおかげで、入れそうだと喜んでいた。3年後のことだが。
 幼稚園と小学校が1985年に統合されて「基礎学校」と呼ばれているが便宜的に小学校と呼ぶことにしよう。8年生になると12歳で上級学校を選択することになる。オランダでは卒業資格はその上にある学校への入学資格になるので、入学試験はなく、やはり学校選択が可能である。図のように大学につながる6年制のエリート学校、高等専門学校への5年制学校、そして4年制の学校がある。4年制の学校は少し前まで普通制と職業制の2種があったが統合された。これらの学校は明らかに難易度において差があるが、最終的には親と子どもに選択権がある。ただ、CITOテストという全国テストの成績を参考にすることが多く、無理していい学校に行こうという生徒は多くはない。VWOは家庭学習を毎日4時間以上は要求され、落第も多いので、勉強嫌いの生徒が無理していってもついていけないことは理解されている。また、上の図には書かれていないが、横滑りの移動も可能なので、4年制の学校に入学して最終的にはVWOを経て大学に進学する者もいる。実際に私の友人にいた。

画像


 このようにオランダの学校制度は卒業資格が入学資格となっていて、卒業試験に合格すれば上の学校を自由に選ぶことができる。学校選択が国全体で完全に保障されているのである。
 次の大きな特徴は公立学校と私立学校が財政的に全く平等で、それは憲法によって定められている。だから日本のように公立学校はお金があまりかからず、私立は学費が高いということはない。義務教育段階では、どちらでもまったく学校に納める教育費は存在しない。義務教育段階を過ぎると授業料が取られるが、私立でも公立でもあまり変わらない。公費補助は平等になされる。そして、私立学校は教育的な価値や立場を自由に定めることができるために、宗教的な学校が多い。キリスト教だけではなく、イスラム、仏教、ヒンズー教、ユダヤ教の学校がある。公立学校は宗教的立場の教育をしないことになっているが、シュタイナー教育やモンテッソーリ教育など、独特の教育観に基づいた教育を行ってもよい。だからフレネ学校でも、公立と私立の両方がある。
 日本では少し前までは学校選択とは公立学校を選ぶか私立学校を選ぶかという問題だった。しかし私立学校は入学試験があるし、また、授業を高いから自由に入れるわけではない。「教育を受ける権利」とは公立学校の教育を受ける権利でしかなかったし、また、入学できる学校を選べずあてがわれるのであれば、本当に権利と言えるかどうかは疑問だろう。それはオランダの制度と比較するとよくわかる。オランダでは公立も私立も教育費は同じだし、また入学試験はなく、前の段階を卒業していれば自由に学校を選択できるのだから本当の意味で学校選択の権利がある。
 では日本での学校選択導入の際に言われたことは、オランダではどうなのだろうか。
 日本の学校選択批判論は共通して、学校選択が「新自由主義」の政策であると決めつける。しかし、オランダの学校選択は100年の歴史を持ち、宗教的な自由が土台である。しかもオランダは典型的な福祉国家だから、学校選択=新自由主義というのはオランダでは全く当てはまらない。ヨーロッパではオランダのような完全な学校選択制度をとっている国は少ないが、以前から多かれ少なかれ選択を認めているのであり、その態様は一様ではない。
 学校選択は地域を分離させるという批判がある。しかし前に述べたようにオランダの地域社会はとても交流が盛んである。子どもたちも夕方一緒に仲良く遊んでいる。ほとんどは異なる学校に通っているが、そんなことは問題にならない。地域の交流は学校を中心とするのではなく、地域独自の立場で行われるのだから、学校選択が地域を分離させるなどというのは、根拠のない批判だろう。日本だって地域のまとまりは学校が実現させているものでもない。このような批判は逆に悪しき学校中心主義なのではないだろうか。
 学校選択は参加と矛盾するような論もある。選択か参加が問題だというわけだ。
 しかし、学校選択が行われている国で、参加が否定されているという例を私は知らない。オランダだって、親は様々な形で学校に参加している。確かに30年以上前は、日本の学級王国のように、親の関与を嫌う風潮が強かったそうだ。しかし、今では親が教育実践の援助を行う機会も多い。お弁当を持ってくる生徒の世話だけではなく、図工の授業にボランティアとして入ってアシスタントをするのは普通だし、親の集まりは学校の運営に大きな影響を与えている。しかし、重要なことは、学校の教育理念や方針に共鳴して子どもを入学させた親だから、学校と親の協力関係はとても良好なのだ。本当は別の学校に行きたかったのに通学区の関係で行かざるをえなかった学校に、積極的に協力するものだろうか。オランダでは子どもを学校に毎日連れて行く親が多いから、そのついでに教師と相談する親が非常に多い。日本では保護者会などでわずかに接する程度だと思うが、オランダの方がずっと親と教師の関係は密接だ。
学校選択は単に消極的な関わりだという批判もある。しかし、オランダやデンマークのように、学校選択の権利が大幅に認められている国では、学校を設置することも実質的に認められていることが多い。日本では学校を設立することは、個人や小さな集団ではほとんど不可能だが、オランダでは先述したように、学校運営経費は公立学校と同じように国が負担するから、親や生徒に支持され、生徒を集めることができれば容易にできる。実に積極的な学校関与というべきだろう。自治体が設立する学校でも、ある人たちが主張する教育理念が自治体関係者に認められれば公立学校でも個性的な学校ができ、運営はほとんど私立と同じようなものだ。
 まだまだ詳しく書くことはできるが、詳細は省く。いずれにせよ、日本の学校選択の批判者たちは、学校選択には多様な形態があり、決して新自由主義の政策ばかりではないことを知るべきだ。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 143
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた 驚いた
面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い 面白い
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!) ガッツ(がんばれ!)
かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい かわいい

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
広く知ってもらいたいこと
オランダの社会と文化 日本と比較しながら(28) オランダの社会と文化 日本と比較しながら(28) wakei/ウェブリブログ  wakeiさんがこの中で述べられていることはとても重要なことだ。オランダにおける「教育の自由」の考え方。それを土台とする学校選択。アメリカ ...続きを見る
今日行く審議会@はてな
2006/07/29 00:16

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
オランダの社会と文化 日本と比較しながら(28) 教育と社会を考える/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる