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zoom RSS オランダの社会と文化 日本と比較しながら(36)

<<   作成日時 : 2006/08/06 19:56   >>

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 小学校を12歳で卒業するときに、3つの類型の中等学校を選択して進学する。実質的な最初の人生選択といえる。残念ながら子どもは中等学校には進学せず1年で帰国したので、中等学校のことを体験的に紹介することはできない。あくまでも訪問などの間接的な体験となる。ヨーロッパの多くの国では、この3つの類型の最初の段階を統一的な中学に再編成し、最初の人生選択を15歳にまで引き上げたのだが、オランダではそれをせず古いシステムを維持したのである。しかし、いかにも古い、階級的な印象を与える制度への批判も絶えずだされてきた。オランダ政府はそれに対応して、3つの類型の最初の段階の教育内容を共通にして対応している。今では最初の2年間は共通の内容を学ぶことになっている。しかしそれはあくまでも建前に過ぎないように思われる。内容を共通にするといってもあくまでも大綱的な基準であり、実際に学力差のある学校で別々に同じ教科を学んでも、実際に行われていることはかなりの差があるはずだ。日本でも、「日本史」という同じ教科であっても、開成のような学校と大学に進学する生徒があまりいない学校とでは、相当違う授業をやっていると考えられる。それでも日本の場合には法的には同じ「高等学校」であるが、オランダの場合には年数も進路も異なる違う学校類型である。進取の気風の大きなオランダで、古い中等学校システムを維持しているのは、実に興味深いことたが、
統一的な民主的な制度が必ずしも教育の平等を実現したわけでもないので、オランダのやり方もひとつの選択だろう。制度を統一する代りに移行を容易にすることで、教育の機会均等を確保しているわけだ。
 6年制のVWOは実に勉強が厳しい。文系の古典コースを履修すると、3つの現代外国語(英語・フランス語、ドイツ語)はもちろんのこと、古代ギリシャ語やラテン語も学ぶことになり、毎日4時間程度の家庭学習が必要だとされている。私が近くの学校を訪問したときには、ちょうど試験が終わった時期だったので、各人の成績が廊下に貼りだされていた。科目と生徒がすべて一覧表になっている大きな紙だったが、のんびりした小学校とは全く違う雰囲気である。年に3回試験があり試験結果に則した落第規程があるが、2年連続して落第すると退学となる。あるVWOを成績で退学処分になった場合、別のVWOに移ることはできないから、HAVOに移ることになる。因みにこの訪問のときに、小学校からの選択で、成績が悪くても親がどうしても入りたい場合どうなるのかと質問したところ、成績の悪い子どもはとらないと断言していた。オランダ人の間でも解釈の違いがあるのだろうが、おそらく話し合いの際に遠慮してもらうという意味だろう。つまりCITOテストや学校の成績を考慮して、小学校の校長や担任がが生徒や親に進学先のアドバイスを行うが、意見が食い違った場合には、中等学校の担当者を交えての話し合いが行われる。その際強く指導をするということだろう。下位の学校に進学しても、その後の勉強でVWOに移行することができるので、対立してまで我を通す親子はまずいないわけだ。
 VWOの生徒のための学習参考書はけっこう出版されていて、家庭教師につく生徒もいるそうだ。ライデンの市立図書館のCDコーナーの非音楽欄の半分以上がVWOの試験対策のCDROMだったのには驚いた。それらは多くが卒業試験のためのものだ。
 HAVOは高等専門学校に進むが、高等専門学校といっても日本では大学のようなもので、教員養成のための学校であるPABOなども含まれる。従って、VWOとHAVOは多少のレベルの違いと卒業試験の要求科目数が異なる程度で大きな相違はないと感じられる。
 HAVOとVWOは教育課程の後半をスタディ・ハウス(Studiehuis)と呼び、新しいタイプの教育を導入するように文部省は求めているが、様々な文献を読む限り論争の種となっているようだ。ちょうど日本の総合学習のような状況といってよいだろう。また期待されていることも似ている。
スタディ・ハウスとは単に教師が一斉授業で教え込むような授業ではなく、生徒が興味をもった題材について、自分で調べ考察していくような内容が期待されている。家庭学習も要求されるのでこうした名称になったのだろうし、また、学校にそうした調べるのに便利な空間を用意するようにも求めている。ただ、文部省の文書にわざわざ「スタディ・ハウスは建物のことではない」と断り書きがあるくらいだから、オランダでも誤解している人が多いに違いない。これからは知識を習得しているだけでは国際社会の競争に耐えられない、必要なのは学ぶ力であるという認識に基づいている。日本の大学の卒業論文などに近いものだろう。日本の総合学習と合わせて、今後が注目される。
vmboは4つのコースがあり、2年の終わりに選択する。オランダの学校は戦前はかなり細かく分かれていたが、戦後次第に統合されてきたのだが、1985年改革でMAVO(普通教育)とLBO(職業学校)とに統合され、そして98年にvmboというひとつの類型になったのだが、結局以前の別々の類型がコースとして残っているわけで、ひとつの学校の中にすべてのコースがあるとは限らない。統合される前の内容が継承されているからである。4つのコースとは、理論的、総合、管理的職業、基礎的職業コースであり、それぞれのコースが更に「技術」「福祉」「経済」「農業」のセクションに分かれている。職業コースは具体的な職業を想定した教育が行われる。
 まだLBOと呼ばれていた時期に農業教育を中心にした学校を訪問したことがあるが、オランダの産業の中で園芸農業は強力な輸出産業であり、設備なども充実していた。コンピューター制御された温室をもち、プロの園芸農家と一緒にコンクールに出品しているそうだ。確かに底辺校であり、生徒たちはコンプレックスをもっていることが感じられたが、しかし、教師たちの熱心な指導と具体的な学習のおかけで、vmbo生徒の学校に対する満足度は高い。
 小学校の卒業は小学校が独自に卒業基準に応じて認定するが、中等学校はそれぞれ異なる進路をもっているので、より厳格な卒業試験が行われる。それぞれ学校独自の試験と中央試験と呼ばれる国家管理の試験とに分かれ、まず学校の試験が行われて、その後合格者について中央試験が行われる。それぞれの試験要項が前年に公表され、選択可能な科目の中から必要な科目数を選び、口頭試験、筆記試験、実技試験などを受けて合格すれば上級学校に進学が認められる。また、HAVOとvmboの場合には、それぞれVWOとHAVOに移行できる試験設定もある。また、再試験などの敗者復活戦も最初から用意されており、オランダらしい寛容さを感じる。国家管理の中央試験は、学校が恣意的な合格を出すことを防止し、それぞれの類型の水準を保持するために導入されており、実際の試験の実施は当該校以外の教師が試験委員となって管理する。
 先にVWOの卒業試験用の教材が多数あると述べたが、やさしくはない試験だから当然不正も行われる。「試験要項」にはこうした不正に対する取り扱いについて予め定め公表することが求められている。不正の主なものはカンニングのようだが、私がオランダ滞在中新聞紙上を賑わしたのは、替え玉受験だった。一歳違いの兄と弟が同じVWOにいて、兄が自信がないので弟が替わりに受験したというわけだ。それがばれて二人とも退学処分となってしまった。日本で今でも大学教員の間で試験期に話題になる事件だが、ある女子大で父親が娘の替わりに受験したことがあった。制服のスカートだったためすね毛が濃いことで怪しまれて分かったのだが、今のようにジーパンで受験するのも珍しくない時代ならばれなかったのだろうか。今でも替え玉受験があるのかどうか、心もとないところだが、オランダでは学校で受験するから、よほど似ている兄弟でもない限りばれてしまうだろう。

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