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zoom RSS 嶺井編著『選ばれる学校・選ばれない学校』の批判(つづき)

<<   作成日時 : 2007/01/29 22:38   >>

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 嶺井氏の編著の検討の続きである。
 学校選択制度に批判的な、つまり市場原理だからとか、格差拡大になるとかの理由で批判的な立場をとってきた人たちは、いくつかの論点的な欠落があるのだが、そのいくつかをあげておこう。
 民主主義に不可欠のシステムとして普通選挙制度があるが、選挙がうまく機能していることはあまりないし、不正な行為が後を絶たないのが現実だろう。しかし、だから選挙制度はいらないという人たちは、少なくとも民主主義を支持する人たちには存在しない。実は学校選択制度も選挙制度と似た「教育を受ける権利」の原理ともいえるものであるが、そこを理解しない人たちが、選択制度のよくない結果のみを強調する傾向がある。「権利」というのは、「何かを割り当てされる」のではなく、主体的に選択できることを言うのであるから、教育を受ける権利という概念は、当然のこととして教育の選択を前提としているのである。だから、結果によくないことがあったとしても、制度そのものを否定するのではなく、より妥当な制度のあり方を考えるべきものなのだ。
 しかし、そのように発想しないために、現にある学校選択制度の欠陥を克服する方策を示すことができないのである。また、その部分的な欠陥を学校選択の欠陥そのものとして誤解するのである。また、現実的な改良意見が出てこないから、新自由主義的な学校選択制度を導入する人たちは、いいようにやれるという土壌を作ってしまっている。
 そうした例をいくつか考えてみよう。
 今回の教育再生会議の提起では、全国的に学校選択制度を導入することが目指されているようだ。しかし、これはまったく非現実的である。選択するためには、選択可能な複数の学校が通学可能範囲に存在しなければならないのは自明だ。このことをきちんと自覚していれば、地方では学校選択制度は、学校の創設が必要となるのであって、統廃合とはまったく逆の効果をもたらすのである。全国的な学校選択制度をとっているオランダでは、複数の学校が存在するようにする責任が自治体にあり、どんなに学校が少ない地域でも、通える範囲に必ず2校以上の学校があるように配置されている。
 また、学校選択制度は、子どもの数よりかなり多くの定員を保持しておかなければ機能しない。つまり、財政的にはかなり不効率な制度なのである。ここは、教育行政当局者たちもあまり理解していないところなのである。最も合理的には、子どもの数に応じた数まで学校を減らすのが財政的にいいのだが、学校選択制度をとる限りはそうはできない。だから、合理的な定員を割り出す努力が必要で、学校選択=統廃合などという単純図式では、責任ある学校作りはできない。
 また、学校選択制度が学力的な格差を拡大するというのは、現にそういう現象が起こったとしても、それは制度の不可避的なものではない。なぜなら、選択制度は選抜をしないのだから、学力の低い生徒も応募できるからである。よい教育をやっている結果として学力が高い学校があるなら、学力の低い生徒たちもどんどん申し込めばいいのだ。そうせず、敢えて学力が低いとされる学校を志望するのなら、また、違うレベルでの考察が必要だろう。もっとも、日本で行われている学校選択制度は実は極めて中途半端なものであって、理論的にはまったく不十分なものだ。通学区は残っていて、自分の通学区に志望する場合には、必ず認められるようになっているのがほとんどだ。だから、ある意味では地位的な不平等を温存したやり方なのであって、もし、もっと学校選択の原理に忠実にするならば、「自分の通学区」という概念を除いたほうがいい。自分の通学区は無条件ということと、あとは抽選であるという方式が、まだまだ不公平感を残しているともいえる。
 嶺井氏のような立場の人は、選択=権利の行使という原則にたって、より合理的な選択制度を考えるべきである。また、選択制度の病理を考察するだけではなく、選択できないことによる病理もきちんと考察すべきだろう。

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