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zoom RSS 教育の再生か教育の撲殺か(7)

<<   作成日時 : 2007/01/13 14:23   >>

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旧教育基本法10条の2項について考えてみよう。

第十条(教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。
2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

 1項で直接国民に責任を負うことが規定されていたが、2項では、教育行政は「必要な諸条件の整備確立を目標として行われ」ることを規定している。これは更に大きな論争課題となっていた条項である。
 歴史的な形成として、2項がアメリカの比較教育学者カンデルの内外区別論を軸としていたことは、当時はよく知られていた。つまり教育には内的事項(教育内容や方法)と外的事項(財政措置を必要とするようなこと)というふたつの事項を区別することができ、内的事項については学校あるいは教師のできる限り自治的な営みに任せ、行政はそれを実現するために必要な財政措置=条件整備を行うのであって、行政は内的事項には関与すべきではないという理論である。これは決して空想的な議論ではなく、少なくないヨーロッパ諸国では、教育内容に関する国家基準などはなく、学校に任され、行政は校舎や教師給与などの財政措置を行うという役割分担をしていたのである。その代表的な国家であったイギリスが、サッチャー改革で国家基準を定めたことでわかるように、こうした体制を維持している国は現在では極めて少なくなってきたが、それでもできるだけ教育の内的事項については、学校の自治を尊重することは西欧諸国では common sense となっている。
 もちろん、すべての国がこうした体制をとっていたわけではなく、内的事項と外的事項が国家と地方との分担関係であった国もあるし、また、戦前日本のように、内的事項こそ国家の重要な行政の軸であった国も少なくない。
 いずれにせよ、2項が内外区別論のような文章であったことから、学習指導要領の法的位置づけをめぐってずっと議論になってきたわけである。
 それに決着をつけるためだろう、この2項は廃止され、内的事項も外的事項も行政の対象であることを明示するような文章に置き換えられた。

第三章 教育行政 
(教育行政)
第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。
2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。
3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。
4 団及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

 国は教育に関する思索を「総合的に策定し」という文言にそれが現れている。つまり、外的事項に限らないのだぞというわけだ。
 しかし、だからといって、内外区別論的な考えが間違っているかというと、そうは言い切れない。
 内外区別論を精緻に論理構成した兼子仁は、行政がまったく内容に関わらないのではなく、それは「大綱的基準」に限定されるとしたのであるが、これは最高裁学テ判決において採用され、その後学習指導要領もかなり簡略な、兼子のいう大綱的基準に多少近くなっているのである。しかも、昨年末の高校における必修科目未履修問題に見られるように、法律による履修基準が少なくない高校で無視されていることが露呈してしまった。つまり、この点に関する限り内的事項行政が形骸化していたわけである。
 その原因を文部科学省の怠慢とみるか、そもそもこうした内的事項を厳格に定め、学校の自治的判断を規制していることの無理と見るかは、簡単に結論はでないことだろう。入学試験のあり方に大きく影響されているから、入試の問題と切り離して考えることはできない。
 ただ、次のことだけは明確に言える。
 教師や教師集団が専門的な立場から教育内容や方法についての選択を、認められないような行政のあり方では、教育活動自体がまともに実践されないであろうということである。残念ながら、そうした動向は次第に顕著になっており、指導力不足教員の問題というのは、多くが「行政が作り出した」現象であると言わざるをえないのである。この新しい規定はますます現場の混迷を深めるように作用する危険性がある。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いきなりコメントして申し訳ありません。オーストラリアの大学で研究生をしています。2006年12月に改正された教育基本法ではなく、旧教育基本法のリンクを探しています(論文の参考資料に使ったため)。改正されたことでそれまで使っていた旧リンクがアクセスできなくなりました。もしも、ご存知なら、旧教育基本法のリンクを教えていただけないでしょうか?
Kinta
2007/02/28 17:53
リンクというのがどういう意味かわかりませんが、本文は以下のところにあります。
http://www26.atwiki.jp/shomen-study7/pages/1878.html
wakei
2007/02/28 20:04

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