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zoom RSS 教育の再生か撲殺か(8)

<<   作成日時 : 2007/01/25 23:17   >>

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 次に「前文」を見てみよう。「前文」があることは、準憲法的な性格をもつとされてきたことであり、かつての政府解釈では必ずしも「準憲法的」性格を承認していなかったので、今回「前文」をつけたことは、承認したことになるのだろう。伝統や愛国心を重視する文言が入ったので、これからは「準憲法的」なものだと主張するようになるに違いない。

 「我々日本国民は、たゆまぬ努力によって築いてきた民主的で文化的な国家を更に発展させるとともに、世界の平和と人類の福祉の向上に貢献することを願うものである。
 我々は、この理想を実現するため、個人の尊厳を重んじ、真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進する。
 ここに、我々は、目本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図るため、この法律を制定する。」

 旧前文は次のようなものだった。

 「われらは、さきに、目本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。 
 われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。 ここに、目本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい目本の教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」

 付け加えられた文言と削られた文言がある。
 削られたのは、「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」という部分である。そして、付加されたのは、文部科学省掲載の文章に下線が引かれており、前文では、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた」「伝統を継承し」「未来を切り拓く」の3つである。
 こうした抽象的な文章はそれほどの大きな影響力はもたないのかも知れない。少なくとも教育基本法がこの60年間それほど政府によって尊重されてきたわけではないから、ただ単に法律上の文章があるだけではそれが実現するわけではないだろう。
 しかしいくつか検討しておく必要がある。

 まずは、旧規定の「理想の実現は教育の力にまつべきものだ」という認識である。これは教育基本法を擁護する人たちからも、「空想的」で「非現実的」と批判されることもあった認識である。つまり、教育が社会を変える力が基本的にあるのかどうかという疑問である。教育の平等が進むとそれによって社会階層の再編が行われ、社会の平等が進展するという事実はほとんどなく、むしろ教育の平等が進むに従って、かえって社会的不平等が拡大する傾向が多く見られることが、さまざまな研究によって明らかにされている。だから、教育の平等が不要だというわけではなく、教育の力が社会変革の原動力になるかどうかについての疑問と考えるべきだろう。ただし、だからといって教育の平等を進めることによって、社会の平等化をめざすという意識を捨てる必要はないが、この点については、改悪というほどのものではないように思われる。
 付加された3つの内容は、特に問題となるようなものではない。しかし、逆に改正を強行した勢力が、これらの改正の内容といかにも乖離している現状について考えざるをえないのである。
 「公共の精神」とはなんだろうか。そのこと自体が論争的であるが、少なくとも、広く国民に対して「正しいこととして」受け入れられている価値観に基づいて行動することを含むはずである。しかし、教育基本法の改正のための公聴会が政府や自治体による作為的な集会であったことが明らかにされている。このような公共の精神に反するやり方が、公共の精神を培うべきだというように規定した法律制定のために行われたわけだ。
 確かに、近年「公共の精神」に反するようなことが横行している。その多くの例が、談合やごまかし(不二家の賞味期限、耐震強度のごまかし、等々)、そして政治家による政治資金のごまかしなど、企業経営者によって行われている。子どもに対して公共の精神を育成しようと考えるなら、こうした社会の不正を的確に正していくことこそが必要だろう。
 

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