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zoom RSS 北欧の教育(2)

<<   作成日時 : 2007/10/21 15:00   >>

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 子どもの意思を尊重し、自立的な姿勢を育成する姿勢は、義務学校にも貫かれている。北欧4ヶ国の義務教育は、「国民学校」という9年制(あるいは10年制)の学校が主体である。9年間の一貫した理念で統一的な教育を行うという考えから、60年代以降導入されてきた。そして、多少の差はあるが、義務教育の上級段階前は試験を行わない教育を実践している。従ってデンマークでは1年生から7年生までは成績表すら出されない。1年に2、3回出される成績表は、子どもの詳細な理解度を示すものではなく、むしろ集団的な比較の対象となる。そうした生徒を比較することをできるだけ避ける教育が行われているわけである。
 日本でPISAの評価が低下し、学力問題が議論されたとき、政府関係者や多くのメディアが、学力テスト等で競争によって学習を喚起する方向での主張が多くなされたが、一位となったフィンランドで逆に競争的な教育とは無縁であることが重視されていなかった。
 この非競争的な教育は北欧全体の特質であると考えることができる。これは、典型的にデンマークに見られる教育義務制度と私立学校の設立を公費で保障する点に現れている。教育を国家公民を育成するものとするか、あるいは個々人の自由な発達を保障するものと考えるかは、この雑誌の読者の中でも多様だと考えられるが、北欧の教育は後者の立場から出発し、その結果として前者が実現するという考えによると言える。
 世界のほとんどの国で義務教育=就学義務であるが、デンマークは伝統的に教育義務、つまり家庭教育による義務教育の実施を制度的に容認している。もちろん、実際に家庭教育で義務教育を行う人たちは、統計的に有意なほど存在していない。むしろ、公立学校とは異なる教育を望む人は、私立学校を設立する方向にいく。そして、私立学校を設立することを容易にする公的保障がデンマーク教育の特質である。
 日本では私立学校を設立することは、膨大な資金を必要とするが、デンマークでは30名程度の生徒を集め、いくつかの基準をクリアすれば、経常費70%〜75%の公的補助を受けることができる。そして、その教育内容には基本的に公的な規制はない。極端に言えばテロリズム容認の教育も可能だという議論すらされることがある。もちろん、そんな学校は存在しないし、また、多くの人たちが私立学校を設立する方向をとるわけでもない。というのは、そうした制度を保障することは、逆に公立学校への信頼、およびその運営者である行政担当者が公立学校教育への自信をもっているからである。そして、市内であれば公立学校の選択が可能である。
 更にデンマークの特質として、本来9年制の国民学校であるが、通常10年生が設けられていることがある。これは家庭教育での義務教育が可能であることと、表裏の関係にあるとも言えるが、単に機械的に9年間の義務教育を受ければいいという意識ではなく、そこで身につけるべきことがあるという意識から、まだ十分に義務教育で習得すべきことを身につけていないと考えた場合、更にもう一年国民学校での学習を係属するシステムである。「自立」と「自由」が基本にあるという意味がここでも大きな意味をもっている。自立とは、自分の意思で行動できることだろうが、そのためには必要な知識や規範を身につけている必要がある。それを十分に習得したかを、きちんと判断し、不十分であれば十分にしてから次の段階に進むという「自由」「自主的な判断」を可能にしていることになる。他の国では「落第」という形で処理するのだろうが、落第は教師・学校側から押しつけられる判断だが、デンマークの国民学校の10年生は自分で判断するものなのである。
 さて、こうした競争的な教育ではないといっても、実はPISAの影響はかなりデンマーク教育の変質を迫っている。一位になったフィンランドとは異なって、デンマークはPISAの点数が悪く、ドイツなどとともにPISAショックに陥った。そして、早速年間授業時数の増加に踏み切り、これまで行っていなかった「試験」をかなり控えめにではなるが、国民学校に導入することが検討されている。この動向は注意深く見つけていく必要がある。

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