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zoom RSS 「大学全入遠のく」は本当か

<<   作成日時 : 2008/08/12 11:25   >>

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 2008年8月8日の各新聞に、「大学全入遠のく」という記事が掲載された。以下は朝日新聞の例である。
 しかし、この説明はまったくおかしい。大学全入を「志願者と入学者が同じになる」という意味で使用してきたのは、稀な使い方であり、「志願者と入学定員が同じになる」という意味で、「全入」を使用してきたはずである。これは、大学の経営が厳しくなるという意味での全入の把握であり、また、現実に入学定員が理由で入ることができない受験生は出現しないという意味で、「全入」である。しかし、志願者と入学者が一致するということは、希望の大学に入れないから浪人するという受験生がいる限り、起こり得ない事態であり、今の日本の教育制度の構造が根本的に変化しない限り、決して起きない事態である。だから、大学全入という言葉を「嫌う」人たちが、何かごまかしのために、意味変化させたのではないかと考えられる。
 現実に起きているのは、一方で入りたい大学に入れなかったので、浪人してもう一度頑張る人たちの存在と、受験生がいればいくらでも入れる余地があるのに、受験生が少ないので定員割れしている大学の存在という、ふたつの両極端なことがらである。そして、志願者よりも、入学定員が多いという意味での「全入」は、既に到来しているのである。だから、定員割れの大学が47%もでているのである。

 こうした混乱は、既に、朝日新聞に触れられている中央教育審議会の答申にある。当該答申では、次のように書かれている。
 
 「18歳人口が減少を続ける中,大学・短期大学の収容力(入学者数/志願者数)は平成19(2007)年には100%に達するものと予測される(従前の試算よりも2年前倒し)。」http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05013101/003.htm
 
 この部分が引かれたのだと思うが、「収容力(入学者数/志願者数)(ただし原文では/の記号ではなく、割り算記号になっている。)という書き方がおかしいことは誰でもわかるだろう。収容力というのは、入学者に対する割合ではなく、定員に対する割合だからである。
 文部科学省はこうした数字のごまかしをこれまでも何度かやってきた。1997年から2005年くらいまで「いじめによる自殺は0だった」という統計などは、記憶に新しいが、高校全入運動が行われていたとき、高校進学率の予想を、文部省の委嘱した研究グループの結論をかなり「低くして」公表したという経緯がある。これは、実際に研究に携わった人が著作に書いている。
 しかし、今はそんな操作はできない。だから、こうした概念上のごまかしをやろうとしているのだろうか。
 文部科学省は、「浪人がでない」ことを臨んでいるのだろうか。そのような高等教育の仕組みを作ろうとしているのだろうか。私は逆だと理解している。少なくとも政治を動かしている人たちは、人々の競争こそが社会を発展させるという意識だから、浪人してまでも特定大学に入ろうとする受験生がいなくなることは、望んでいないと考えられる。浪人がいれば、全入にはならないのだから、全入は政府の望まないところと考える。
 しかし、それは、本当に若者の能力やエネルギーを活用する好ましいやり方だろうか。私は大いに疑問である。
 特定の大学に拘るのではなく、つまり、どの大学を卒業したかではなく、大学でどのように学び、どんな実力を形成したのかが問われるような社会になることの方が重要であり、そうなったら、浪人は無駄な過ごし方となる。大学院教育がもっと普及すれば、やり直しの機会も増える。そうした方向こそが、人的資源の有効活用というべきだろう。
 
朝日新聞の記事
「大学全入」遠のく、進学率予想以上の伸び 08年調査
2008年8月8日
 08年4月の大学・短大の志願者数が74万4千人に対し、入学者が68万4千人だったことが文部科学省の学校基本調査で分かった。志願者数と入学者数が同じになる「全入時代」が07年春にも到来すると試算されていたが、文科省は「近い将来に、志願者数と入学者数が同じになる見込みではない」としている。
 旧文部省は「09年に全入となる」と97年に試算。その後、進学率が横ばいで推移していたこともあり、中央教育審議会(文科相の諮問機関)は05年の答申で、実現の予想を07年春に前倒しした。しかし、景気回復の傾向が続いていたことや、就職で有利になるとの判断などが影響し、高校卒業後に大学進学を希望する割合はこの数年で上昇。今年は高校卒業生の60.1%が大学・短大への入学を志願。浪人と合わせた志願者は中教審答申の試算より10万人以上多く、入学者は志願者数の約92%にとどまった。
 一方、入学者が定員を割った私大はこの春、全体の47%になり、人気が集まる大学とそうでない大学の二極化は進んでいる。

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