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zoom RSS 学校選択制度廃止傾向?

<<   作成日時 : 2008/09/29 20:00   >>

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 学校選択制度を採用した自治体のいくつかが、選択制度を止めることを決めたり、あるいはその方向で検討しているという。私は、原則的に学校選択に賛成だが、現在の選択制度はほとんどが問題あるもので、実際にはうまくいかないだろうと考えている。たぶん、その弊害が認識されだしたのだろう。だからといって、原則的に選択制度が間違っているとは思わない。
 そもそも学校選択制度とは、学校が多様な教育内容や教育方針をもっていることを前提に、自分の支持する、あるいは自分に合う学校を選択することを可能にする制度である。学校選択制度が長く実施されてきたのは、ヨーロッパの大陸諸国のいくつかだが、いずれもそうした前提での選択制度が実施されてきた。
 ところが、日本の場合は、前提が全く異なるわけである。
 ではどのように異なるのだろうか。
 
 まず学校選択を伝統的に行なっている国も、また英米のように新自由主義政策の一環として新たに導入した国も、学校の教職員は学校単位で募集し、学校に雇用されている。もちろん、公立学校の場合給与は国や自治体で支払うわけだが、採用は学校単位で行い、原則として、同じ学校にずっと勤める。だから、学校がある特別な教育的方針をもっている場合、その方針を支持する、あるいは共感する教師を雇うわけで、学校の方針や内容が明確になっている。ところが、日本の場合には、もともと学習指導要領で教育内容がかなり規制され、校長も教師も頻繁に転勤するから、学校独自の方針をもつことが難しい。「特色を出せ」といっても、基本的な条件が整っていないのである。
 
 第二に、最も徹底した学校選択制度をとっているオランダの場合と、明確に異なることだが、日本の学校選択は、通学区指定を残したまま、指定された通学区の学校には無条件で入学することができるから、選択の幅が初めから小さいか、あるいは、少子化のあおりで空き教室がたくさんあるから、それを目一杯使おうとすると、かなり多数の生徒を引き受けることになり、その分他の学校への影響が大きい。オランダの場合には、通学区が存在しないので、それぞれの学校で定員がいっぱいになれば打ち切るので、実はかなり多数の生徒が集まる学校と、ごくごくわずかなな生徒しか集まらない学校というように、散らばることが少ない。日本の学校選択がうまく機能していないと感じられている最大の現象は、あまりに生徒数のばらつきが生じていることだが、そういうことは、当初からわかっていたことである。つまり、合理的的な定員管理に対する方針なしに実行されたことの弊害である。
 
 第三に、選択制度の導入の目的が「競争」のためであったということである。前に書いたように、本来学校選択とは、学校が多様であるから、選択を認めるのであって、競争とは逆る方向性を向いた制度なのである。競争は、同質性があるから成立するのであって、そもそも、学校の特出を出せといいつつ、競争のために学校選択制度を利用するというのは、節約の大切さを説きながら、どんどん無駄なものを買わせているような指導のようなものだろう。
 
 多少ことなる面からの検討となるが、学校選択制度というのは、多様性を前提にしていることから、小さな学校がより機能しやすいことは明白である。しかし、日本人は大体において、大きな学校を好む傾向がある。それは、明治以来、学校を競争主義的に機能させてきたことから生じている心情だといえる。あまり生徒が集まらなかった学校は、教師が行き届いた教育をしていて、教育自体には満足しているが、あまり評価されていないと感じることで、ネガティブな感情に囚われているという。しかし、競争主義から自由になれば、小さな学校で、教師の指導が行き届いていることは、まったくすばらしいことではないか。そのように思えれば、生徒の少ない学校こそ、実は学校選択制度の目的が実行しやすい学校であるし、また、事実そのように理解されてもいるようだ。
 
 最後に「地域との結びつきがなくなる」という見解について、一言。
 地域というのが、「通学区の地域」という意味であるならば、確かに、地域との結びつきが薄くなるだろう。しかし、地域というのは、学校の周りだけをいうのだろうか。どんなに学校選択をやっても、所詮小学生や中学生が通ってくる公立学校なのだから、通ってくる範囲で、地域を考えればよいし、また、学校のまわりの住民の協力を仰ぐことに関して、それ以外の地域から通ってくる生徒がいるから、不可能になるということはないだろう。より、広く地域を考えて、より豊かな結びつきを構築すればいいことであって、これはためにする議論というより、地域概念を貧しくする発想なのではないだろうか。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
 私は学校選択制度には、どちらかというと否定的です。子供の教育について、家庭を中心とする生活を学校に合わせるという考え方に、馴じんでいないからだと思います。学校は、個性を発揮しようとする以前に(個性を発揮しようとすることそのものを否定しているわけではありません。ただ、個性は、その個がいわば宙に浮いた状態で出てくるわけではありません。)、主な役割と思われる基礎学力形成のための方法を自ら確立するべきだと考えています。
 私自身は、そのヒントとなることを願った書店を開いてみました。折りがありましたらのぞいてみてください。
URL:http://www.hotbooks.jp
ブログ:http://blog.goo.ne.jp/activelight
伊藤武明
2008/10/12 16:51
コメントありがとうございました。確かに、学校は基礎学力を重視すべきものだと思いますが、基礎学力だけを教える学校というのは、世界中にないと思います。基礎学力は当然のこととして、その上に何を付加するかという点について、近年どんどん多様になっているのではないでしょうか。それは社会そのものが多様になっているからで、教育がそれに対応しないわけにはいかないのではないでしょうか。とすれば、画一的な学校では対応できない時代なのだと思います。
wakei
2008/10/12 18:13
選択制は疑いようのないことで
現状の問題点を直視して
建設的な意見が活発に行われることを期待します。

黒猫
2010/08/22 17:46

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