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zoom RSS オランダの plusschool の提言

<<   作成日時 : 2009/01/29 21:31   >>

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1月26日に、オランダの学術審議会ともいうべき組織から、「学校における信頼」という大部の報告書が発表された。WRR Wetenschapelijke Raad voor het Regeingsbeleid "Vertrouwen in de school"

 オランダでもこれから本格的な論議が始まる感じであるが、簡単に内容を紹介しておきたい。もっとも、A4で300ページのものなので、全部目を通したわけではないことをお断りしておく。
 
 オランダでは、義務教育修了せずに学校を去ってしまう生徒の問題が、かなり前から問題となっており、政府はさまざまな対策を講じてきた。例えば企業と提携して、職業訓練をしながら、学校に通い、義務教育修了させるシステムを、自治体に義務付けるなどである。
 というのはオランダでは、義務教育を修了していないと労働が許可される納税者番号を取得できない。納税者番号を所有していないと雇用されない。従って、義務教育を修了していないと労働することができないから、通常の生活は不可能になる。これは社会としてのコストも個人としての生活も大きな問題を抱えることになるわけである。こうした義務教育未修了者は、当然オランダの中等学校の最も各の低い学校である vmbo という普通教育と職業教育を共に行なう学校の在学者に多い。そこで、vmbo に通う生徒で、学習の負担が重過ぎて、早く退学し学業を終えてしまう生徒の問題、単に学業上の問題だけではなく、彼らは、他にも、犯罪、麻薬、家族問題等々様々な問題を抱えていることがあり、自身をなくしている場合が多い。特に4大都市では顕著で、そうした多数の若者が存在している、というわけである。

 審議会では、学校関係者だけではなく、行政官、青年労働者、福祉関係者、専門家など、様々な人の協力が必要であると考える。
 
 「彼らは、学業の負担が大きく、様々な問題を蓄積させているので、非常にストレ
スの多い生活をしている。従って、学業だけではなく、精神的な援助が必要であり、
最低一人の理解があり、信頼できる大人が相談できることがよい。」
 
 その中で、教師に最も重要な働きを期待するが、まずは、当該学校の教師が相互に協力しあうことが必要であるが、しかし、教師だけではだめで、麻薬中毒や犯罪歴がある場合には、組織の援助体制が必要であるとする。オランダの中等学校では、進路相談を中心とするスクールカウンセラーが、実力ある教師の中から選ばれている。デカーンと呼ばれるが、認定試験を受けた有資格者である。デカーンは信頼をもたれているし、また普段からソーシャルワーカーなどと緊密な連絡をおっており、オランダの学校は概して外部の専門家と相談して処理することが少なくない。審議会報告は、そうした体制の強化を主張しているのであろう。
 
 それから接続問題にも触れる。「比較的安全で安心できる vmbo から、mbo に移ると、よそよそしい感じを受け、移行ショックがある。従って、ふたつの学校の接続関係を改善する必要がある。教育内容の配分を調整するとか、より実用的な内容を増やすなど。これまで、特に mbo では、学問的な内容を重視し、それを押しつける傾向があった。そのた
めに、落ちこぼれている生徒にとっては、とても学習が困難であった。」というわけである。上級学校に進学するときには、どんな段階でも、以降が困難な状況が発生し、そこで学校生活になじめない生徒が出てくる。日本の大学のようにレジャーランドと揶揄されるところでも、5月病として昔から指摘されてきた問題である。
 日本でも、一貫校の試みが、幼小、小中、中高と各段階で行なわれているが、vmbo とmbo の場合には、かなり性質が異なるという点で問題が多いわけである。vmbo は底辺校であるために、生徒たちは劣等感に陥りやすい。しかし、教師たちが職業教育の中で、将来への展望を開いている場合には、学校への満足度が高くなっている。そして、学力の低い生徒たちのために、かなり面倒見がいいのが普通である。
 しかし、上級の mbo となると、教師たちが専門的な教育を行なうという意識なので、勢い高いレベルのことを要求し、ついていけないという感覚を生み出してしまうのである。
 そこで、この報告書は極めて斬新な考えをここで示し、それが話題となっている。

 「協力関係をきちんと築くためち、plusschool という概念を導入したい。これは新しい学校を設立するというのではなく、vmbo mbo の協力だけではなく、企業や福祉団体等さまざまな協力の下に、いろいろな人に教育活動に参加してもらったり、実習に参加したりして、従来の学校教育だけではなく、さまざまな学びの場を設定することである。」

 そして、具体的には、vmbo からすぐに mbo に進学するのではなく、1、2年 vmbo にとどまってから進学する、そして、双方のカリキュラムを接続という観点から再編成するということも提言している。

 オランダでは1990年前後から「広い学校」という概念が登場している。これは、複数の学校や他の組織が協力しあって、教育を行なうシステムのことで、日本でいえば、連合大学院が比較的近い感じだろうか。日本の連合大学院は、私は実際に体験したことがないので、どの程度「連合」なのか、連合は形式的な実質的には、それぞれ分離しているのか、わからないが、この「広い学校」は協力関係が実質的なものである。plusschool はメディアでは、この「広い学校」の発展形と理解されているようだ。
 しかし、提言としては、新しい学校を設置するのではなく、あくまでも「協力関係」の実現をそう呼ぶと断っている。

 そして、他の具体的提言もしている。まずは、「親との協力も不可欠である。教師と親が理解しあうことだけではなく、子どもの実態を知らない親が多いので、子どものことを親に知ってもらうことも大切である。
必要なことを整理すると
1 生徒に何を守る必要があるのか、というルール感覚をきちんとつけさせること。
2 彼らにはコストがかかることを認識すること。やっかい者という認識になりがちである。
3 短期的な成果を求める傾向があるが、より長期的な視野が必要である。
4 さまざまな組織が関わる必要があるが、ばらばらではなくリーダーシップをとって、協力体制を築くことが必要。」

 そして、特に強く強調していることは、「パートナーシップ」ある。そのためには、上下関係で動くのではなく、「教師により広範な自由」を与える必要がある。そうすることによって、状況に対して必要なことを認識し、的確な対応が可能になる。
 日本で何か教育改革が行なわれるときには、たいてい「**が必要」という形で、やらねばならないことが示される。そして、その都度教師の自由は制限されていくことが圧倒的に多い。しかし、オランダでは、多くの場合、何か新しい提言が示されるときには、必ずといっていいほど、教師の自由が必要であることが強調されている。教師が自由に判断できなければ、具体的な問題解決への適切な筋道が出て来ないし、また、出てきたとしても教師の取り組みの意欲が向上しないと考えられるからである。

 そして、以下のように財政的な支えが必要であることが強調されているのである。
1 財政的な充実が必要である。
2 vmbo を plusschool にするための財政的拡大が必要である。特に、特別な援助が必要な生徒のような補助が必要
3 機会に恵まれない生徒の過大負担を解消することが重要。教師の水準は地域平均を超えること。
4 4大都市については、特に財政補助が重要であることと、

 まだこの提言に対する反応についてはフォローしていないが順次紹介していきたい。

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