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zoom RSS PISAのモデルはフィンランドよりドイツ

<<   作成日時 : 2009/05/19 22:31   >>

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 新学習指導要領の改訂内容が、PISAショックをひとつの契機にしていることは、周知のことであろう。2003年実施のPISAの結果が2004年に公表され、日本の順位が軒並み下がったことで、文部科学省その他、教育関係者の多くがショックを受けたのだった。
 そのあと、一位だったフィンランドに学べ派と、学習量増大すべき派(こちらが文部科学省)という二通りの路線が形成されて、今に至っている。しかし、どちらにせよ、PISAの示す事態に対応した議論や政策を提示しているかというと、大いに疑問である。PISAは課題発見や表現等の実践的な知的能力を、未来の知識社会に必要とされる能力と考え、それを試験し、また、育成を刺激するために実施されているのに、学習指導要領は、旧来型の「知識」量を増やすための学習量増加をもたらし、逆に課題発見などについては、あいかわらず「伝統文化」とか「道徳教育」の強調によって、むしろ矛盾する政策を強調している。2009年のPISAの成績が若干上がるかも知れないが、日本が大いに知識社会で活躍する人材を、この教育によって育てることができるかどうかは、かなり問題であろう。

 他方、フィンランドに学べ派は、ほんとうに正しいのだろうか。
 フィンランド教育の紹介者として第一人者の地位を築いた福田誠治氏は、フィンランドが競争のない教育を行い、子どもの自発的な学習を重視しているから、学力世界一になった、競争主義を導入・強化しているイギリスは低い地位に甘んじているとして、競争主義を軸とした分析をしている。もちろん、それだけの単純な見解ではないが。
 しかし、競争主義だと学力が伸びないというのは、PISAの上位の国家を見る限りは、とてもそういうことはいえない。韓国や香港など、競争的な教育の地域が上位に入っており、日本もその中に含まれる。そして、競争主義的でない国家で下位の国も少なくない。フィンランドが競争主義的ではない教育をやって一位になっているからといって、競争主義でないから学力上位だというのは、かなり無理があるといわざるをえない。

 それで、よくよくPISAの順位表を見ていると、あることに気づくのである。つまり、上位に入っている国は、いずれも、次のふたつの条件の少なくともひとつをもっているのである。ふたつの条件をいずれも欠いているのに、上位に入っている国は、私には見つからない。

 その条件とは
 第一に、「人口が少ない」こと。
 第二に、移民の子どもが少ないこと。
 そして、フィンランドは実にこのふたつとも満たしている国で、上位に入って少しもおかしくないのである。日本は人口が一億を超えている中では、唯一上位に入っているが、第二の条件を満たしている。
 同じ北欧の国家で、人口規模も同じような感じで、比較的似た教育制度をもっているのに、デンマークやスウェーデン、ノルウェーはそれほどPISAの学力順位が高くないのに、フィンランドが高いのは、他の3カ国が移民が多いのに対して、フィンランドは極めて少ないという違いがあり、これは全体的な成績には大きく影響しているのである。

 もちろん、フィンランドの教育がすばらしいことは、否定するつもりはないが、日本が学ぶべき国は、実はドイツだと思われる。
 ドイツは第一回のPISAの成績が非常に悪く、日本よりはるかに大きなショックに見舞われたのだが、第二回、第三回と確実に順位をあげているのである。次回は日本より上位にいく可能性もある。こうしたすべて上昇傾向にある国は、ドイツ以外にはあまりない。そして、ドイツが何故第一回に悪かったのか、そして、何が改善されたのかを見ると、日本の学習指導要領の改訂とは違う、より掘り下げた分析と、対応があることがわかる。

 ドイツの教育はレベルが高いと思われていたし、また、ドイツ人自身がそう思っていた。しかし、PISAの結果でそれが幻想であることがわかった。その原因は、いくつかあるが、主なものは、ドイツの教育は早くから分化し、(小学校は4年)レベルの高い中等学校(ギムナジウム)と低い中等学校(ハウプトシューレ)の教育格差が極めて大きく、また、レベルの高い中等学校への進学に、親の社会的・経済的地位が大きく影響している、つまり、「格差社会の弊害」がひとつ。そして、移民の子弟が極めて多いという問題であった。そして、もちろん人口も多い。

 ドイツの教育制度は州の事項なので、統一的な制度改革として行われているわけではないが、この間、共通して取り組まれたのは、レベルの低い中等学校の学力を向上させるための努力がなされてきたこと、つまり、日本のテスト主義に見られるように、優秀な成績校に報奨を与えるのとは異なる方法をとったこと、移民子弟の言葉の能力を向上させるための努力をしてきたことが、PISAの成績の向上に現れたと考えられている。

 日本が格差社会、そして教育格差を是正する努力をしないと、少なくともPISAの成績の向上は難しいと思われる。(ドイツが具体的にどういう改善策をとってやってきたかは、別の機会に紹介したい。)

ドイツについては、
"PISA 2000 Die Studie im Ueberblick" Max-Planck-Institut fuer Bildungsforschung 2002
2007.12.4 の文部科学省によるメディア公表文書 'Deutschland Schuelerinnen und Schueler haben sich bei PISA 2006 verbessert - positiver Trend setzt sich fort'

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