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zoom RSS 「人の死」についての合意水準

<<   作成日時 : 2009/06/21 21:10   >>

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 臓器移植法案はいくつかの論点をもっていると思うが、少なからぬ人が、「人の死」を「脳死」とすることについて、「国民的合意がない」と述べたり、書いたりしている。前回のブログで共産党の党議拘束棄権について疑問を呈したところ、共産党の見解が載っているページを紹介され、早速見てみた。そこにも、その点について書かれていた。
 しかし、それは本当だろうか。むしろ、「脳死が人の死である」ことは、およそ近代人の常識に属することなのではないかと、私は思う。
 そもそも、人の誕生や死は、ある瞬間的なことではない。誕生は受精から始まると考えても、10カ月の長い過程を経てやってくる。そして、いつの点で人間となるのかの「国民的合意」は、確かに存在しない。死は、誕生ほど長い過程をもっていないが、やはり、瞬間的に訪れるわけではないだろう。

 しかし、死と誕生の大きな違いとして、誕生は長い妊娠の後、「出産」という明確な生物的現象で完成するのに対して、死は、死後の処理を、文明化された人間は行うため、ある時点で「死」を結論付ける必要がある。死が生物としての活動をすべてを終了し、無機物に分解されれば、誰にとっても、その人は死んだと確信できるだろうが、そこまで待つ人びとはいない。すべての細胞が死ぬまで待つわけでもない。
 では、どういう時点で、その人は死んだと判断しているのか。それは、人間は単なる動物ではなく、人格をもった存在であり、人格が消滅する時点で死んだと考えられ、人格は脳によって担われているから、脳が死んだ時点で、人間は死んだと考えられる、これがほとんどの人びとの考える死である。脳死は死ではない、と主張している人でも、議論して、では、死とは何か、と問えば、これ以外の結論を出す人は、今まで会ったことがない。
 いわゆる「三徴候」というのも、脳死判定の素朴な方法と言ってよいはずである。
 では、何故「国民的合意」などということが問題とされるのか。
 それは、死は単なる生物的な現象なのではなく、社会的現象であり、親しい人にとっては、「受け入れる時間や儀式」が必要だという点にある。
 人が死ねば、例えば日本では、まず当日か翌日あたりに「通夜」が営まれ、故人に対する回顧を共有する。そして、その翌日に埋葬し、最後のお別れをする。その間、短くても2日間、長ければ1週間ほどの間隔がある。その間に、死を感情的に受け入れるのである。 このことは、国民の共通感情として、広く共有されている。実はこれが「国民的合意」なのであろう。

 しかし、臓器移植を前提とした脳死判定は、「脳死による死」が認定された直後から、「死後の処理」が極めて迅速に行われる、という点で、まったく異質な世界になる。故人の回顧や通夜や埋葬などという、常識的行事を一切後回しにして、他人に「臓器としては生きている部分」を提供するために、取り出すという医療措置を施される。つまり、「死の受け入れの儀式」がすべてすっ飛ばされてしまうのである。つまり、国民的合意のない部分は、この点なのではなかろうか。言い換えれば、多くの人にとっての人の死とは、生物的な死だけではなく、社会的な処理を含めた概念なのである。

 だから、臓器移植をより広範に実行できる体制を作るため必要なのは、人の死は脳死であるという「合意」を形成することではなく、死を社会的な意味でどのように扱うのか、という点に広げて、様々なあり方が可能になったことを受け入れるようにすることであろう。死後、臓器を提供して、その人を回顧するときに、あの人は、死んでも人を助けたんだよ、と通夜のときに語り合い、埋葬して後も、それを記憶にとどめるという死の受け入れのやり方もある。このことをおかしいという人は、あまりいないのではなかろうか。これはあくまでも、個々人の意思を尊重して行うという「選択の問題」である。

 しかし、これだけでは済まない問題がもうひとつ残されている。それはまた改めて書くことにする。

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