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zoom RSS 基礎科学力向上提言は、リアリティがあるか

<<   作成日時 : 2009/08/05 22:50   >>

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 新聞にはあまり報じられていないようだが、8月4日付けで、「基礎科学力強化に向けた提言」なるものが、文部科学省の諮問する委員会の「基礎科学力強化委員会」なるところから出されている。
 私は文系人間なので、ここで主に対象となっている理系の大学院については、詳細を語ることはできないが、初等中等教育についても触れているので、その点については、コメントしたいと考えた。

 しかし、この報告をみて、まず感じるのは、いかにもお手軽な提言だということにつきる。社会的にりっぱな人たちばかりで構成されている委員会だから、きちんとした議論をしたのだろうけれども、第一回の会合が今年の4月8日で、その後第四回の7月9日までの会合で、提言がまとめられていることになるのである。しかも、第一回は「検討の進め方」が主要な議題だから、議論は実質3回ということになる。これで、現状を踏まえた有効な打開策などできるのだろうかと、誰もが疑問に思うだろう。

 少なくとも初等中等教育の面においては、ほとんどまともな検討をしたようには見えない。
 「未来の創造的人材の育成」という項目の中で、(1)初等中等教育という部分があり、まず枠で囲まれた原則は以下の通りである。

 「小学校から大学まで各学校段階における理数教育等の充実を図るとともに、それぞれの取組を社会全体で関連づけて創造性豊かな人材を育成する仕組みを構築すべき。
 また、創造性豊かな人材を育成するためには、社会において科学技術に関する関心が共有されていることが重要であることから、科学技術に関する社会のリテラシーの向上を図ることが必要である」

となっている。そして、その後に9項目の具体的提言が並ぶ。要約すると
1 青少年自然の言えを活用。子どもたちに科学技術に関心を抱かせる。地域指導者の理解を深める。保護者の啓蒙。
2 小中高大の知的好奇心の醸成。科学への関心と意欲の喚起。将来の研究者育成の仕組み構築。知識教授と自習のバランス。思考力、判断力、表現力の指導充実。
3 文化的教養と科学的教養のバランスのとれた教育の充実。
4 「出る杭を見いだす」ための外部人材の活用。
5 科学に興味をもつ子どもの大学進路の適切な選択。キャリア教育の推進。進路に関する保護者の理解。
6 企業や研究所の研究者が初等中等教育で教えやすいような特別免許の活用。
7 ポツドクを教育界に招き入れるための人材発掘。教員の指導力向上につながるカリキュラム開発。
8 教科書の充実や観察・実験の充実。
9 スーパーサイエンスハイスクールの拡充、研究開発学校制度の活用、中高一貫教育の活用で理数教育の促進。

 上では省いたが、3の文章の前に「子どもたちの理科離れが問題との指摘もあるが、イマジネーションや構想力も重要であり、人文も含めて広くとらえることが必要である」という文章がある。率直にいって、何を言いたいのかわからない。
 子どもの理科離れといわれている現象は、決して、自然科学系から離れているのではなく、社会科学や人文科学も含めて、「科学的探究心」が薄れているということに他ならない。文系と理系のバランスのとれた教養が必要であることは、いうまでもないことであって、現状を意識しているかのような文章を書きながら、実はどう意識しているのか、どう理解しているのか、まったく不明な文章なのである。
 理科離れは、「学習意欲の衰退」の典型的な事例であって、理科以外からは離れていないわけではない。むしろ、自発的な学習や知的好奇心の衰退といってもいいだろう。この原因ははっきりしている。それは、ずっと教育政策的に進められてきた教育の質が、「正解を覚えることが学習である」という学習姿勢を一貫して押し進めてきたからに他ならない。だから、いくら「創造性の推進」を語っても、現在の教育の質が、どうして生まれ、どのようにしたら打破できるのか、それをリアルに分析した上での提言でなければ、現状を打開できるものではないだろう。

 ちなみに、私は小学校の教師になろうとしている学生を、日常的に指導している。もちろん、そのためには、免許を取得し、採用試験に合格しなければならない。
 ところで、全国どこの大学でもそうだと思うが、「教員養成学部」は、文系だと思われている。そして、ごく少数の例外を除いて、将来小学校の先生になろうと思っている学生は、理数系科目が嫌いであり、もちろん苦手である。大学入試でも、理数科目をあまり勉強しなかったり、まったく勉強しないで通過する。

 私が勤務する部局では、小学校免許のコースをとるためには、選抜試験を通過しなければならない。数年前に、私が強力に主張して、それまで小論文だった試験に、普段の大学での教育学関係の授業の成績と、理数テストをいれた。理数テストをやるということだけで、既に学生はパニックに近い反応を示すのである。
 この選抜試験の実際の教師になってからの成果については、まだ年数がたっていないから分からないが、なんとか、教師になる人が、しっかりと数学や理科を勉強してほしいということを理解させたかったのである。

 いくらポツドクを活用したって、それは限度がある。一番大事なことは、小学校の先生が、しっかりと算数や理科を、生徒が興味をもてるように教えられるようにすることなのだ。そうしたときにこそ、すそ野が広がって、その中から優秀な人材が育ってくる可能性が拡大するのではないか。

 つまり、今の通常の学校体系の中では、理科離れは「普遍的現象」つまり、生徒だけではなく、教師も含めての現象なのであり、教師自身の理科離れ、というより、科学離れを克服しないと、基礎科学力など強化できないと言わざるをえない。
 そういう意味で、この提言は、いかにも表面的であるように思うのだが。

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