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zoom RSS 全国学力テスト開示問題(1)

<<   作成日時 : 2009/08/12 22:28   >>

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 全国学力テストの開示問題について、少し原則的に考えてみようと思う。
 常にまず問題になるのは、何故やるのか、という点であろう。もちろん、表向きの理由と裏に隠された意図とに乖離があると考えている人たちが、たくさんいるから、こういうことが問題になるわけであり、私自身もそうした疑いをもっている一人である。
 とりあえず、導入が決まったときの、文部科学大臣の会見の記録というのが、文部科学省のホームページに今でもでているので、関連部分を引用しておこう。

−−−
平成17年8月26日大臣会見概要
大臣)私といたしましては、全ての学校に対して、児童生徒の学習到達度・理解度を把握し検証する機会を提供することが重要であると考えておりまして、調査が円滑に実施されるように引き続き努力してまいりたいと考えております。
記者)
 全国学力テストを復活するということになると、また競争原理が働くのではないかという批判が出るかと思いますが、それについてはいかがでしょうか。
大臣)
 競争原理といいますか、競い合う心や切磋琢磨することは必要だと思います。要するに全国的な学力水準がどうなっているかということを検証していきながら、いろいろな方策を講じることが大事なことだと思っています。また、現に、平成16年度は39都道府県11政令指定都市において、独自に学力調査が実施されています。特段、混乱や問題も生じておりませんし、全国的な学力調査の実施にあたりましても、過度の競争、また負担にならないように配慮すれば実施にあたっての懸念はないものと考えております。
記者)
 全国学力テストの関係ですが、昨日、会見で事務次官が、全国テストは地方自治体に強制することはできないというような主旨のご発言をされたようですけれども、大臣としてはどうお考えですか。
大臣)
 強制することはできないけれども、協力していただけるものだと思いますし、ぜひ協力していただきたいと思います。
−−−

 ここで言われていることは、まずは「学力状況の調査」であり、競争原理が働くのではないかという批判に対しては、「競い合う切磋琢磨」が必要だと述べている。そして、強制ではないことも述べられている。
 この時点で、「裏の理由」への疑念が、事実であることは、明らかだろう。この会見を行ったのは、中山文相であるが、中山氏が国会議員の継続をしない、つまり次の総選挙で立候補しないと表明したときに、この学力テストは、日教組の強い県は学力が低いことを証明しようと思って導入したのだ、と明確に述べたことで、導入の責任者が自ら述べたことは記憶に新しい。
 これほどの表裏の相違があれば、いろいろと考えざるをえないのは当然だろう。
 
 まずは「学力状況の調査」という点であるが、これはたくさんの人から指摘されているように、単なる調査であれば、60億もの費用をかけて悉皆調査をする必要は、全くなく、おそらく1億程度の費用でできるサンプル調査で十分であろう。そのようなことは、十分に文部科学省も分かっているはずである。だから、学力状況の調査は、「全国学力テストの目的」ではない。
 
 「競い合う切磋琢磨」というのは、おそらく「本音」であろう。平成17年(2,005年)といえば、第2回PISAの結果が2,004年の暮れに公表され、日本の順位が顕著に下がったことが、それまでのゆとり教育への疑問を生じさせ、学習指導要領改訂期にあたっていたために、ゆとりから学力重視路線に舵きりをしていた時期だからである。
 しかし、このことについては、不可解な点がある。文部科学省は一環して、成績の開示を最小限にとどめようとしており、市町村レベルの平均点の開示を支持していない。個別の学校には成績がいき、生徒個人に対しては、簡単な結果が示されるようだ。しかし、子どもが復習したり、学習課題が明らかになるような、民間の予備校等が行うような丁寧な分析結果が返されるというようなものではないようだ。
 もし、切磋琢磨させることが目的なら、県別だけではなく、市町村別、学校別の平均点なども開示した方が、尻をたたく効果が大きいわけだから、それを推奨するはずであるが、1,960年代の経験から、それはできないというジレンマがあるのだろう。
 
 成績の開示という場合、全国的な傾向、各都道府県の傾向、各都道府県の成績、各市町村の傾向、各市町村の成績、各学校の傾向、各学校の成績、各個人の傾向、各個人の成績というように、実は多くのデータがある。公費を使って行われた事業であるから、結果の開示は当然であるという論があるが、どのレベルのデータの開示が「当然」であるのか、明示した文章はまだ読んだことがない。

 まず、開示を迫っているもっとも強力な主体は、新聞記者など、メディア関連であるという。つまり、ニュースにするためであろう。もし、メディアがニュースにすることで、結果として、過度の競争をあおる結果になるとしたら、メディアはどういう責任をとるのだろうか。責任をとることは、もちろんできないだろう。そのことを十分に理解しての請求なのだろうか。大いに疑問である。

 もちろん、開示が必要であり、かつ有効でる主体もある。それは受験した生徒本人及びその保護者と、学校である。成績の開示が必要なのは、それを指導に活かすことができる場合だけだろう。実際に指導している学校と、授業を受けている本人は、結果ができるだけ詳細に、かつ分析された形で提示される必要がある。しかし、聞くところによると、本人に渡される資料は、そうした分析などはなされていないという。
 この文章を読んでいる人は、まず、模擬試験を受けたことがあるだろうし、その際、成績の全体傾向と、自分の成績の分析が、資料として渡されたはずである。そういうものは、実は、この全国学力テストでは添付されないようなのだ。個人からすると、何の為に受けねばならないのか、ほとんど意味がわからないだろう。結局、国のために利用されているということになる。学校に対して、全国、都道府県レベル、市町村レベル、そして、当該学校の分析が渡されるなら、十分に指導に活用できるだろうけど、そうでなければ、やはり、指導に活用することはできない。

 開示開示とある人びとは、騒いでいるが、結局のところ、「順位の開示」しか知ることはできないし、また、そのことにのみ意味を見いだしているのだろう。結局、現場に責任を負っていない者の単に知りたいだけのものに過ぎないように感じるのである。(つづく)

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全国学力テスト 順位 結果
数学オリンピック順位の偏りはなぜ?らず、それをもとにした疑問です。日本は90年から出場してますが、いつも10位前後でかわらず、これは、学力低下問題とは別次元のことです。日本の数学教育とは全く違うものなんでしょうか?そして中国が突出し、韓国やベトナムなど[⇒回答を読む] ...続きを見る
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