教育と社会を考える

アクセスカウンタ

zoom RSS 高校授業料無償化再論

<<   作成日時 : 2010/03/21 18:09   >>

驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 高校授業料無償化法案が衆議院を通過し、参議院にかかっている。新聞報道を読んでも、詳細がわからないので、衆議院の委員会の議事録を読んでみた。現在3月9日までの分が、国会のホームページに掲載されているが、それだけでもかなりの量だ。

 いままでの新聞報道では、よくわからなかった点はいくつか解決された。一番大きな疑問点は、すべての外国人学校を対象にしており、その中で朝鮮学校だけ排除しようとしているのかという問題だが、すべての外国人学校ではないが、少なくとも高校レベルの教育をしている学校は対象になるということだった。昨年の毎日新聞の報道の通りで進んでいるようだ。もしそうであるなら、朝鮮学校だけを排除することは、やはり民族的な差別になるだろうと思う。しかし、外国人学校を対象にすることについては、私自身はやはり問題であると思うし、そうした支出が継続的な可能であるか、また国民的支持を得られるかについては、大いに疑問である。
 
 何回か前に書いた、外国人学校にも国内の学校と同様に補助するのが「国際標準だ」と朝日新聞で語っている弁護士の話は、やはり、間違いであるという前提で委員会の議論はなされている。むしろ、国際的にはほとんど例がないということで、世界の先駆けとなるような意識らしい。ところで、この委員会での審議で議論に値するような話題を提起している議員はあまりなく、共産党の宮本岳志という議員が、論理的な質問をしている。
 長くなるが、引用する。
−−−
○宮本委員 日本共産党の宮本岳志です。
 高校無償化法案の内容を充実する立場から質問をいたします。本日は、この無償化法案の外国人学校への適用問題と、高校の公私間格差問題、私学の無償化問題をお伺いいたします。
 この無償化法案は、法案第二条のとおり、「高等学校の課程に類する課程を置く」、日本にある外国人学校のすべてに適用する、こういうことでございますか。

○川端国務大臣 お答えいたします。
 法案では、専修学校と各種学校については、高等学校の課程に類する課程として文部科学省令で定めるものということでございます。文部科学省令において対象を定める際の客観性を保持するために、高等学校の課程に類する課程として、その位置づけが、学校教育法その他により制度的に担保されているということを規定することと予定をいたしております。
 そういう意味から、自動的に外国人学校の高等課程に類するものすべてが今の時点で対象になっているということではありません。今からの議論にもよると思っております。

○宮本委員 そこが大問題に今なっているわけですね。
 改めて聞きたいんですけれども、日本は、国際人権規約A規約、いわゆる経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約を一九七九年に批准をしております。子どもの権利条約も一九九四年に、あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約についても一九九五年に加入をしております。
 この人種差別撤廃条約では、その第五条で、「第二条に定める基本的義務に従い、締約国は、特に次の権利の享有に当たり、あらゆる形態の人種差別を禁止し及び撤廃すること並びに人種、皮膚の色又は民族的若しくは種族的出身による差別なしに、すべての者が法律の前に平等」という権利を「約束する。」こうして、「(e) 経済的、社会的及び文化的権利」、特に五番目には、「教育及び訓練についての権利」を挙げております。
 また、首相が施政方針演説で、段階的な無償化条項についてもその留保撤回を具体的な目標とすると述べられたまさにその国際人権規約の第十三条は、「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。」としております。子どもの権利条約も、すべての者に教育についての児童の権利を認めております。国際条約上、どの国の子供に対しても学ぶ権利をひとしく保障するというのが当然の国際ルールだというふうに思います。
 文部科学大臣、この国際ルールは守らなければならない、この認識に違いはありませんね。

○川端国務大臣 国際人権規約のいわゆる留保以外の部分は批准をしておるわけでありますし、その部分に沿ってやることは当然のことでございます。
 ただ、今回の無償化の部分、要するに権利という部分でいえば、高校に入りたいのにこの人たちは受験資格があるとかないとか、そういう基本的な権利の阻害はあってはならないことであることは当然でございますが、そういう意味で、今回の部分は高等学校の課程に類する課程という人に対して支援をするということでありますので、高等学校の課程に類するということの判断をすることは差別をすることではないというふうに思っております。
−−−
 このあと、大学入学資格の点でやりとりがあるが、それは省略する。
 さて、人種差別撤廃条約での「教育及び訓練についての権利」があらゆる差別なしに、方の前の平等を約束する規定が、外国人学校の生徒に対する国内学校の生徒と同様な補助を意味するとしたら、そんなことを守っている国は国際的にほとんどないと言えるだろう。これは、委員会のやりとりでも確認されている。
 つまり、この差別撤廃というのは、国内法で規定されている教育・訓練施設への受け入れに関しての差別撤廃ということであると解釈すべきであって、国内にある外国法に基本的に依拠した施設までも含むとは解釈されないと私は思う。ブラジル学校についても、この委員会でブラジル人学校の運営に参加している日本人が参考人として出席しているが、基本的にブラジルの教育課程に従って運営していると述べている。
 日本にいる外国人の子どもを、日本の学校に入れないというのは明確に差別であるが、日本の法規で運営されているわけではない外国人学校(一条校として)で学ぶ権利を保障することは、逆に独立して運営する権利を与えることだから、補助が平等でないことは条約違反とはとうてい考えられない。
 
 韓国学校の多く(といっても3校のようだが)は、一条校として認可されているから、このような道を外国人学校に開いている以上、学校運営当局の「選択」というべきであろう。
 
 ブラジル人学校の場合、生徒や保護者の意思が帰国か定住かという問題があるが、帰国意思の者であれば、当然ブラジルの教育課程を望み、日本の規制を受けたくないだろうし、また、定住であれば、むしろブラジル人学校では不十分な教育になるのではなかろうか。定住する以上日本語の習得が不可欠であり、ブラジル人学校では日本語習得が十分となる可能性は低く、むしろ、日本の学校の中でブラジル人でもきちんと母語を介して教育を受けられるような措置を部分的に取り入れることで、日本での生活力を形成するような方向をとらせるべきだろう。こうした総合的な対策なしに、むやみに授業料補助をすることが、長い目で見て効果的であるとは思えないのである。
 
 議事録を読んで、改めて分かったことは、公立高校と私立高校とでは援助の原則が異なることだった。公立高校は組織補助であるのに対して、私立高校は個人に対する支援であるということだ。だから、私立学校の場合には、親の収入などの証明とともに申請書が必要となる。親の収入によって補助額を変えるからだが、この個人補助という観点を導入したために、外国人学校への補助するということになっているようだ。
 
 ここで大きな疑問となる。
 外国人学校に通う外国人を、日本人と同様にに就学補助の対象とするというのは、聞こえはいいが、放漫支出という印象を拭えない。本当に必要な支出であれば容認されるだろうが、必要とは思えないし、また、国際的にもほとんど例のない支出をして、大きな負担を背負いこむことになれば、ますまず財政的な破綻を招く要因となるだろう。
 またほとんど議論になっていないようだが、アメリカンスクールやインターナショナルスクールは、学費が200〜300万かかるといわれ、極めて高額なことはよく知られている。(外国にある日本人学校も高い。)そういう学費を払える人たちにも、支援金を出すのだろうか。また、高校段階だと過ぎているが、アメリカンスクールなどに通っている日本人は、日本の義務教育法制を違反している人たちであり、そこを経て今高校クラスにいる人たちにも援助するのだろうか。疑問はたくさんある。私は朝鮮学校への支援よりも、アメリカンスクールへの支援の方がより問題だと思っている。
 
 また、私立学校の場合、義務教育段階ではこうした就学支援金がないのに、義務教育後である高校段階で支援金を出すというのも、ずいぶんとおかしな話だ。
 
 そして、最大の問題は、どこを対象とするのかしないかの、この議論を国会で行わず、法案成立後に、文部科学省が決めるということにした点である。日本の教育行政の戦後改革で勅令主義から法律主義への転換が行われたとされるのだが、実はそれは部分的にであって、法律ではおおざっぱなことしか決めず、省令で具体的なことを決めるということが、教育行政においては非常にたくさんあり、実質的に戦前の勅令主義と大差ないという点があるだが、この無償化対象についても、民主党がそうした民主主義的でないやり方に逃げ込んだことは、大いに批判されるべきだろう。少なくとも個別の学校ではなく、外国人学校を認めるのか、とすると、どこまで「高校教育課程」なるものに合致しているかが基準であるのか、今後学習指導要領に応じた教育をしていないことも、国庫補助の対象となるということなのか、等々の確認を国会の場で行うべきだろう。
 
 民主党はこれまで密室政治であった自民党を批判して、国民の支持をえたわけだが、この高校無償化については、自ら密室部分を作り出したと批判されることになるだろう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
驚いた

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
高校授業料無償化再論 教育と社会を考える/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる