教育と社会を考える

アクセスカウンタ

zoom RSS 福岡教育大学での講演記録回収問題

<<   作成日時 : 2011/08/27 16:40   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

 8月21−25日付けのいくつかの新聞に、福岡教育大学でのできごとについて報道されている。2009年に行われた教職員用の講演で、愛知の大学教授が招かれて行った話の中に、不適切な内容があったということで、その講演を掲載していた昨年の紀要を回収したという記事だ。
 この教授は、別途調べて名前もわかったが、臨床心理学の分野では、比較的有名で、講演等で活躍している人のようだ。
 産経新聞によると、次のようなことらしい。

---
 福岡教育大(福岡県宗像市)が開いた教職員対象の講演会に講師として招かれた愛知県内の私立大の男性教授が、同和地区が校区内にある中学校で起きた問題を紹介する中で、ユダヤ人が虐殺されたナチス・ドイツの収容所に例え「ここは学校なんかじゃない。アウシュビッツ」と発言していたことが25日、福岡教育大への取材で分かった。大学はこの講演録をそのまま掲載した紀要を大学内外に約150冊配布しており、「内容が不適切だった」として回収を進めている。
 講演会は平成21年8月に福岡市で開かれ、講演録によると、教授は校区内に同和地区がある中学で、教師が保護者に金銭を要求された話や、複数の教師が鬱病で休職した話を紹介。辞職を考えた教師から相談を受け「特殊訓練の施設。あるいは、アウシュビッツ。そう考えれば、移るとき1冊書けますよ」とアドバイスした、と述べた。講演録には「(会場笑)」と発言後の参加者の反応も書かれていた。(産経2011.8.25)
---

 実に情けないことだ。同じ研究者として、また私自身の専門ではないが、臨床心理学科に所属する人間として、非常に残念である。
 実は、この記事を読んだときに、直ぐに大学の図書館にメールをして、回収に応じないように要請したのだが、後の祭りで、既に返却したあとだった。回収されてしまったということは、本当に正確なことがわからない、闇に葬られてしまったということだ。

 産経は回収に至る経過をあまり報じていないが、朝日によると次のようなことらしい。

−−−
 同大によると、講演録をまとめる作業は、大学の研究者が責任者となって行い、講師を務めた男性教授本人も原稿を確認。同大の教授らからなる編集委員会の審査も受けたとみられるが、こうした発言は素通りしたまま、昨年3月に紀要が発行されたという。149冊を教育関係者や他大学、児童養護施設など県内外に送付したが、すべては回収できていないという。

 今年7月に外部から「問題だ」と指摘を受け、回収を開始。8月12日、外部の有識者も入った調査委員会を立ち上げた。同大は「人権尊重という観点からみて不適切な内容だった。調査委員会で事実関係を調べている」とし、調査委の報告がまとまった後、掲載に至った原因や再発防止策、人権教育のあり方について見解を示すという。

 男性教授は、朝日新聞の取材に、発言を事実と認め「話した内容は事実だが、同和地域と関連があるような話し方をしたのは間違いだった。理不尽な要求をする保護者への対応で疲弊している先生たちを励ましたいという思いだった。猛省している」と述べた。
2011.8.25朝日新聞朝刊
−−−

 ここで確認できることは、本人が明確な意識をもって大勢の前で話し、そして、それをおこした内容に目を通して掲載したわけだから、教授は話した内容に対して、確信をもっていたと考えざるをえない。教授の弁明によるとは、「話した内容は事実」というが、一体何が事実なのか。もし、弁明のように、同和地域がたまたまある中学でのできごとで、同和地域の保護者とは全く無関係の事実であったのならば、話しそのものが「内容は事実」とはいえないし、それを、あたかも同和地域の保護者がやったように語ったということであれば、信じがたいほど無責任な人物ということになる。
 しかし、事実であるかどうかは、私にはわからないが、少なくともこの教授は、そうした恐喝めいたことをした保護者、しかも彼によれば警察に捕まえさせたようだから、よく知っている人なのだと思うが、同和地域の人間であると思っていたのではなかろうか。そうでなければ、そんなことをいうのは、あまりにも不自然だ。
 そして、もし自分がそう思っていたのならば、そして、それが本当に事実ならば、誤解を与えたなどという謝罪をする必要はないわけだ。事実を語ってそれを謝罪するというのは、専門家とは言い難い。

 もし、間違いであったのならば、なぜ、自分が間違ったことを、公然と語ってしまったのか、きちんと検証すべきであるし、謝罪で済む問題ではないだろう。

 私は、普段まわりに多数の心理学者がいるので感じているのだが、心理学者の少なくない人たちは、本当に社会科学的な視点や、法律的な視点を欠いている。これは現場の教職員用の講演だったそうだが、教師になるためには、採用試験を合格しなければならないし、その試験には、教育法規があり、また、教育原理では同和教育を含む人権教育は、重要な領域である。だから、どこまで理解しているかはさておき、教師になった人たちは、そうしたことを勉強している。

 しかし、大学の心理学の教授になるためには、法律も社会科学も何も知らなくてもよい。採用試験などはないし、心理学と同和問題はほとんど接点がないし、また、法律も接点がない。人権などまったく勉強しなくても、心理学の教授になれるのである。
 こうした「教養」という点でアンバランスな専門家が犯した不十分な分析に基づく講演だったのだろう。このようなことは、今後改善されなければならないように思われる。

 第二に、問題があるからといって、なぜ回収するのか。これでは、問題の正しい把握や、適切な対応を学ぶという点で、マイナスであるし、教訓も何もえられない。それに、この紀要は、特別なもので、私の大学でも一般書架には置かず、特別の許可がある者だけが閲覧できるようになっていた。従って、むしろ、言論としての正しいやり方は、何が不適切であったのかを、本人が誠実に反省して、反省を含めた内容の文章を印刷して、必ずその書籍と一緒に閲覧するようにはさみこむような処置をした方が、間違いを起こさないために有効な方法である。同和問題で書籍が問題を指摘されると、これまでも「回収」措置が繰り返されてきた。しかし、それは問題を再度生じさせることを防ぐよりは、むしろ助長させるだけである。何も学ばないのだから。

 福岡教育大学では、第三者を含めた調査委員会を作って調査をしたようだが、少なくとも昨日福岡教育大学のホームページを見た限りでは、その報告は見つけることはできなかった。つまり、言論活動(紀要というのは、学術論文を掲載する紙誌だ。)によって起きた不祥事を、何事もなかったように隠蔽したということだろう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
福岡教育大学での講演記録回収問題 教育と社会を考える/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる