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zoom RSS いじめ対策の客観主義と主観主義

<<   作成日時 : 2015/07/05 21:36   >>

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 安倍内閣の下で、教育制度に関する変更がどんどん前面に出てきている。おそらく、1940年代後半の戦後改革をどんどん解体した50年代にも匹敵するかも知れない。それらについては、継続的に考察していくつもりであるが、逆に、かつて変更したのにあまり現場が改まっていない部分も感じることがある。大津のいじめ自殺事件に関連して、いじめ防止や、教育委員会関連の法律制定や改訂があったが、実はいじめ対策についての現場の、特に管理職レベルの感覚は、極めて古いものが残っている。
 最近、ボランティアで学校に入っている学生から、いじめの被害者から相談があった場合には、直ちに校長に報告して、いじめの事実を確認するために加害者とされている者から聴取する必要があると指導されている旨伝えられた。
 また数年前のことだが、学内集団面接試験の際に、ある教員が、いじめ被害者から相談を受けたら、担任としてどうするか、という質問があり、ほぼ全員が、直ぐに加害者を呼んで事実関係を調査しますと回答していた。そして、その元校長だった教員は、「そうだね、事実を確認しないといけないよね」と満足そうに頷いていたのを覚えている。
 ところで、このふたつの事例の間に、「いじめ防止対策推進法」の制定がある。そして、10年ほど前、2006年のいじめ定義の客観主義から主観主義への変更があった。
 これらの変遷を見ると、非常に考えさせられるものがある。
 数年前の、いじめ防止対策推進法以前の校長の認識は、明らかに、いじめ定義の客観主義に基づいた、旧来の指導方法をそのまま維持していることがわかる。定義変更は、いじめ行為の事実よりは、被害者の子どもの意識を重視したものであるが、もちろん、これは統計処理のためのものではなく、指導原則の変更を伴っていたはずである。この定義変更は、通常のいじめ行為はなくても、いじめられた子どもが、いじめられていると感じている場合にも、いじめと把握して指導するという点が強調されているが、ただそれだけではなく、スクールカウンセラーの導入にも影響されているが、指導そのものを被害者の意識を重視することが必要であることを示している。端的には、子どもが担任にせよ、スクールカウンセラーにせよ、自分がいじめられていることを訴えてきたとき、従来の客観主義であれば、事実確認をすることが重要であり、そのためには、被害者側だけではなく、加害者にも事実確認をすることが重視されていた。(もちろん、個々の対応は多様だったろうが。)しかし、被害者中心であれば、被害者自身が、どのような対応を望んでいるかを考慮することが、最初に求められる。もちろん、いじめが犯罪を構成するような、悪質なものであれば別であるが、そうでない場合には、たとえば、担任に相談し、話を聞いてもらうこと自体が重要であるという場合もあるだろうし、担任に知ってもらい、何気なく観察してほしいという希望をもっているかも知れないし、直ちに、加害者にやめるように指導してほしいと思っている場合もあるだろう。もし、加害者が相談を知ったときに、報復的に出ることを、被害者が恐れているし、また、その可能性がある場合には、担任は、安易に加害者に確認をするべきではない。もちろん、担任に相談した以上は、解決を望んでいるわけであり、事実を把握する必要はあるだろうが、事実の把握のために、必ず加害者に確認する必要があるわけでもないだろう。
 また、スクールカウンセラーへの相談の場合には、より情報管理は重い意味をもっているはずである。
 さて、「いじめ防止対策推進法」は、こうした主観主義のいじめ対策をどのように位置付けているのかを見てみると、法律であるためもあるだろうが、客観主義的な色彩が濃いように感じる。
 学校現場にとっては、四章「いじめの防止等に関する措置」が直接関係する部分である。
−−−
(学校におけるいじめの防止等の対策のための組織)
第二十二条  学校は、当該学校におけるいじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、当該学校の複数の教職員、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者その他の関係者により構成されるいじめの防止等の対策のための組織を置くものとする。
(いじめに対する措置)
第二十三条  学校の教職員、地方公共団体の職員その他の児童等からの相談に応じる者及び児童等の保護者は、児童等からいじめに係る相談を受けた場合において、いじめの事実があると思われるときは、いじめを受けたと思われる児童等が在籍する学校への通報その他の適切な措置をとるものとする。
2  学校は、前項の規定による通報を受けたときその他当該学校に在籍する児童等がいじめを受けていると思われるときは、速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認を行うための措置を講ずるとともに、その結果を当該学校の設置者に報告するものとする。
3  学校は、前項の規定による事実の確認によりいじめがあったことが確認された場合には、いじめをやめさせ、及びその再発を防止するため、当該学校の複数の教職員によって、心理、福祉等に関する専門的な知識を有する者の協力を得つつ、いじめを受けた児童等又はその保護者に対する支援及びいじめを行った児童等に対する指導又はその保護者に対する助言を継続的に行うものとする。
4  学校は、前項の場合において必要があると認めるときは、いじめを行った児童等についていじめを受けた児童等が使用する教室以外の場所において学習を行わせる等いじめを受けた児童等その他の児童等が安心して教育を受けられるようにするために必要な措置を講ずるものとする。
5  学校は、当該学校の教職員が第三項の規定による支援又は指導若しくは助言を行うに当たっては、いじめを受けた児童等の保護者といじめを行った児童等の保護者との間で争いが起きることのないよう、いじめの事案に係る情報をこれらの保護者と共有するための措置その他の必要な措置を講ずるものとする。
6  学校は、いじめが犯罪行為として取り扱われるべきものであると認めるときは所轄警察署と連携してこれに対処するものとし、当該学校に在籍する児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは直ちに所轄警察署に通報し、適切に、援助を求めなければならない。
−−−
 22条の学校にいじめ対策の組織を置くことは、前進といえるだろう。
 しかし、23条の項目には、いくつか問題を感じざるをえない。
 まず第一項の「相談に応じる者」はどこまで入るのだろうか。教育センターや教育委員会の窓口、児童相談所などであれば、学校への通報は、職務上の処理として、通報を受けた側が個人情報管理をしっかりと行えば、当然の措置といえるが、医師や臨床的な相談所の場合にも、それを当てはめることには無理がある。また、親に学校への通報義務(とまでは書いてないが、法律として規定するときには、義務と考えられる。)を課すことには違和感を感じる。学校への不信感をもっている親であれば、学校に相談してもらちがあかないから、自分で努力しようと思うかも知れない。それを通報しなかったことをもって、非難するのだろうか。
 そして、最大の問題は、次の項目だろう。ここでは、以前の客観主義の時代に逆戻りしている印象を受ける。「速やかに、当該児童等に係るいじめの事実の有無の確認」をして、更に結果を設置者に報告するとある。
 では、子どもが親に、「みんなが僕と口を聞いてくれないんだ」と相談すると、親が担任に通報し、直ちに委員会が機能して、学級の子どもたちが、彼と口を聞いていないかを確認し、教育委員会に報告するということになる。そして、学級の子どもたちには、彼とちゃんと口を聞きなさいと指導し、それになお彼が不安を感じたら、いじめをしている学級の者が教室外で学習するような措置をとる、つまり、彼以外の子どもたちは、別の場所で勉強するのか、それはあまりに無理なので、彼だけが、他の場所で勉強するのかわからないが、この条文によれば、そうした措置がとられることになる。
 もちろん、実際にはこのような事例では、そうした措置がとられることを、法は想定していないだろう。しかし、現場では、ではどこからなのか、という線引きは非常に難しい。そして、客観主義的な法規定になっている以上、現場は、安易な事実確認に走る可能性は極めて高い。実際に上記校長はそうした意識になっている。また、加害者側と被害者側の間にトラブルがおきないようにという規定はあっても、保護者に対しては措置がある程度可能でも、子どもに対して確実に、「ちくったことへの報復」への対応措置がとれるかどうかは疑問である。
 いじめが起きないようにすること、また起きてしまったときには、被害者の側に立った解決を誠意をもって実践することが大切であるが、この法律は、その意識があることを否定はしないが、むしろいじめ対策を通じて、学校の管理を強化する意図を強く感じてしまう。
 長くなったので、また続きを書くことにする。

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