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zoom RSS 中央大学の事件で考える

<<   作成日時 : 2009/05/27 11:15   >>

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 中央大学理工学部の事件は、大学教師なら誰しも、程度の差はあれ、「他人事」ではないと感じただろう。当初語っていなかったとされる「動機」について、どうやらぼちぼち語りだしたようだ。もちろん、詳細が明らかになるのは、裁判でであろうが、まずは、「大学院進学希望をもっていたのに、高窪教授から就職するように勧められた」ことを恨みに思っていたというようなことが、報道されている。
 
 5月27日の読売新聞によると、次のようだ。
 
 「 捜査関係者によると、警視庁が当時の同級生などから事情を聞いたところ、山本容疑者は高窪さんから熱心に卒業論文の指導を受け、論文も合格したが、卒業が決まった際、「まだ社会に出たくない」「卒業せず、大学に残りたい」などと大学側に相談していたことがわかった。

 山本容疑者と同じ時期に高窪さんの研究室に所属した20歳代の男性も読売新聞の取材に応じ、高窪さんが、山本容疑者の消極的な性格を心配して就職を勧めた経緯などを証言した。当時、高窪さんは、山本容疑者について「人前で研究を発表することが多い大学院では苦労するのではないか」などと語り、山本容疑者から進学か就職かを決める相談を受けた際には、最終的に就職を選ぶよう助言したという。

 山本容疑者は卒業後、1部上場の大手食品メーカーに就職。しかし、職場環境が合わなかったことなどから計4回の転職を繰り返し、07年夏頃からは、平塚市内にある自宅近くのホームセンターでアルバイトとして働き、生計を立てていた。」
 
 多くの人は、一部上場の大手食品メーカーに就職できたのに、何を恨みに思うのか、と訝しく感じるだろうし、もちろん、私もそう思う。ただ、中央大学の大学院進学者の決定システムがわからないが、常識的に考えると、論文が合格した時点で、大学院に行きたいというのは、一年更に遅れるだろうし、その時点で就職が決まっていないと、大手の会社に就職できるわけないのだから、「就職が決まっている状態で、一年遅らせて大学院に進学したい」という相談を受ければ、ほとんどの場合、就職した方がいいと勧めるに違いない。もし、大学院志望なら、入試の段階(夏から初秋の時期が普通だ)で相談するのが普通だから。
 
 さて、私が書きたいことは、このようなことではない。この背景にある日本的風潮についてである。
 
 高度な専門職、大学院に進学してその後就くことが予想されるのは、そうした高度な専門職であるが、それにはやはり能力と適性が必要であるといえる。そうした高度な専門職の卵を指導する人は、その人が能力と適性があるかどうかについて、判断でき、必要なら、別の道を考えた方がいいとアドバイスすることが必要なことがある、と私は考えている。もちろん、そうしたネガティブな助言は、相当慎重であるべきだし、また、最終的決定は当人の問題であることを、きちんと明確にすべきであると思う。
 しかし、こうした考えは、私の知る限り、日本ではごくごく少数派であって、多くのひとは、本人が希望している以上、いかにネガティブに内心評価していても、それを言うべきではなく、あくまでもその希望にそって援助するのが正しい、と考えている。少なくとも私にはそういう印象がある。
 
 しかし、実際に能力と適性がないなら、いくら頑張っても、その職業に就くことは難しいのが事実であるし、また、就いたとしても、成功する可能性は低い。もちろん、発奮してものすごく努力し、成功する場合もあるだろうが、それは、そのアドバイスがきっかけで発奮した結果なのだから、間違ったアドバイスをしたとは思わない。
 むしろ、別の道を模索した方がいいのに、延々と空しい努力をしている場合が、はるかに多いのではなかろうか。
 
 そういう意味で、高窪教授は、報道されている限りの情報から判断する限り、勇気をもって助言したのだし、大手メーカーに就職している以上、間違った助言ではなかった。しかも、根気のいる理工系の大学院で、成果をあげられなかった可能性も十分にあるわけだから、大学院に進学したしたで、別の恨みをかった可能性もある。また、大学院の試験を受ければ100%合格するというものでもないだろう。
 
 このようなことを考えていると、進路に関する指導の日本的風潮というものが、この事件の背景にあるような気がしてならない。そして、ネガティブなことは言わないという風潮がますます広まるのだろうか。(なお、誤解のようようにつけ加えておきたいが、大学卒程度の専門職ではなく、あくまでも大学院卒を前提とする「高度な専門職」を想定している。)

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