教育と社会を考える

アクセスカウンタ

zoom RSS 高校無償化法が向かうところ

<<   作成日時 : 2010/03/12 22:20   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

 高校無償化について、民主党自身は、外国人学校のどのあたりまでを含める政策なのか、民主党のホームページを見てみたが、単に高校無償化という言葉が並ぶ文章ばかりで、今問題になっている点について、まったく触れていないことがわかった。

 実は普段ほとんど毎日新聞をチェックしておらず、毎日新聞だけ(だと思う)が昨年10月に以下のように報道していたことを見逃していた。

「高校無償化:高専、外国人学校、専修学校も対象 概算要求に盛る−−文科省方針
2009.10.14 東京夕刊 1頁 政治面 (全968字) 
 民主党が政権公約に掲げた高校授業料の実質無償化について、文部科学省は、高等専門学校や専修学校の高等課程、外国人が通う各種学校なども対象とし、必要額を来年度予算の概算要求に盛り込む方針を固めた。高専は5年制だが、第1〜3学年を対象とする。【加藤隆寛、本橋和夫】
 鈴木寛副文科相が毎日新聞の取材に「なるべく多くの人の学ぶ機会を応援したい」と述べ、こうした方針を明らかにした。
 政府は来年4月から公立高校生の授業料を無料とし、私立高校生の世帯に年12万円(低所得世帯は最大24万円)を助成する方針。鈴木副文科相は国公立の高専について、平均授業料が23万円を超えることから、私立高校生と同様に低所得世帯への増額措置を適用する方針も明らかにした。
 美容師や調理師養成校などを含む専修学校のうち、高等課程(中卒者対象)の生徒は対象とする。また、外国籍でも、学校教育法に定める各種学校の生徒は加える方針で、朝鮮人学校やインターナショナルスクールなどが該当。ブラジル人学校などに多い無認可校は「制度の枠組みの中に入れ支援するのが望ましい。認可のハードルを下げるなどの見直しが必要」とし、対象としない考えを示した。
 全国の高校は5183校(生徒334万7000人)で、専修学校高等課程は495校(3万8000人)、高等専門学校は64校(5万9000人)。民主党が当初の予算額として想定した4500億円より要求額は膨らむ見通し。
 支給額を増やす低所得の目安は年収500万円が基準となる見通しだが、段階的な支給額の増加なども含め、財務省と調整する。
 支給は、生徒や保護者の受給権を学校設置者が代行する形で学校側に渡す「間接支給」方式とする。私立高校で支給額の増額を求める場合、保護者の収入証明書を添えて学校に申請し、授業料との差額を納付する仕組みになる。」

 ほぼ同時期の朝日の報道は以下のようだった。

「朝日2009.10.16
「◆高校無償化に4501億円 文科省
 文部科学省予算の最大の目玉は、民主党がマニフェストで来年度からの実施を約束した「高校授業料の実質無償化」。今回、4501億円を計上した。これを新たに積んだ15日時点の概算要求額は5兆7562億円で、09年度の同省予算5兆2817億円と比べて9%増だった。ただ、同じく公約した医師不足対策費用と無利子奨学金の充実は、金額を示さない「事項要求」にとどまった。類似事業の整理などによる削減額は、09年度当初比で640億円。
 高校無償化で、公立高生は基本的に来年4月から授業料(年約12万円)の支払いが不要となる。私立高生の場合、授業料負担が約12万円減、世帯年収500万円以下なら約24万円減となる。低所得世帯の高校生向けに返済が不要の奨学金も創設する方針で、123億円を計上。収入350万円以下の世帯の生徒約45万人を対象に、授業料を対象とする高校無償化ではカバーできない入学料や教科書費などの負担軽減を図る。自公政権下で毎年1%減額されてきた国立大の運営費交付金は、13億円増の1兆1708億円。」

 実際のところ、文部科学省の概算要求書を見ると、「高等学校等就学支援金交付金」449,231,953円、「高等学校等就学支援金事務費交付金」858.396円となっているので、朝日の報道が、実際に文部科学省の概算要求として出された数字を示している。
 これと毎日新聞の外国籍でも各種学校の生徒は加える(朝鮮学校・インターナショナル・スクール)、そして専修学校の高等課程も加えるために、当初の4500億より増えるという記事からみれば、ここで実質的に、外国人学校は除外されていると見られたのではないか。現在の公立高校の生徒数と授業料を計算した上での額だろうから、当然、この概算要求の時点で、各種学校である外国人学校への補助は含まない前提になったのではないかと考えられる。
 産経新聞には私が利用できるデータベースがないので、正確には調べられていないが、産経新聞は比較的過去に遡って記事のリンクが貼ってあるので、それをたどっても、この10月時点で朝鮮学校を含めた外国人学校を対象にしたなら、産経新聞が当然批判的文章を掲載したはずであるが、それは見当たらない。

 ところが、実際にはすべて含めたいという民主党のある部分の意思と合わせて、朝鮮学校を除外するなというキャンペーンがはられて、現在のような問題となったと思われる。そこで、修正案となっているだろうが、当初の高校無償化法案はどうなっていたのかを確認しておこう。

−−−
第一七四回 閣第五号
 公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律案
 (目的)
第一条 この法律は、公立高等学校について授業料を徴収しないこととするとともに、公立高等学校以外の高等学校等の生徒等がその授業料に充てるために高等学校等就学支援金の支給を受けることができることとすることにより、高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的とする。
 (定義)
第二条 この法律において「高等学校等」とは、次に掲げるものをいう。
 一 高等学校(専攻科及び別科を除く。以下この条及び第四条第三項において同じ。)
 二 中等教育学校の後期課程(専攻科及び別科を除く。次項及び第四条第三項において同じ。)
 三 特別支援学校の高等部
 四 高等専門学校(第一学年から第三学年までに限る。)
 五 専修学校及び各種学校(これらのうち高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるものに限り、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定する学校以外の教育施設で学校教育に類する教育を行うもののうち当該教育を行うにつき同法以外の法律に特別の規定があるものであって、高等学校の課程に類する課程を置くものとして文部科学省令で定めるもの(第五条及び第七条第一項において「特定教育施設」という。)を含む。)
2 この法律において「公立高等学校」とは、地方公共団体の設置する高等学校、中等教育学校の後期課程及び特別支援学校の高等部をいう。
3 この法律において「私立高等学校等」とは、公立高等学校以外の高等学校等をいう。
   第二章 公立高等学校に係る授業料の不徴収
第三条 学校教育法第六条本文の規定にかかわらず、公立高等学校については、授業料を徴収しないものとする。ただし、授業料を徴収しないことが公立高等学校における教育に要する経費に係る生徒間の負担の公平の観点から相当でないと認められる特別の事由がある場合は、この限りでない。
2 国は、公立高等学校における教育に要する経費のうち、前項の規定の適用がないとしたならば地方公共団体が徴収することとなる授業料の月額の標準となるべき額として政令で定める額(第六条第三項において「公立高等学校基礎授業料月額」という。)を基礎として政令で定めるところにより算定した額に相当する金額を地方公共団体に交付する。
   第三章 高等学校等就学支援金の支給
 (受給資格)
第四条 高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)は、私立高等学校等に在学する生徒又は学生で日本国内に住所を有する者に対し、当該私立高等学校等(その者が同時に二以上の私立高等学校等の課程に在学するときは、これらのうちいずれか一の私立高等学校等の課程)における就学について支給する。
2 就学支援金は、前項に規定する者が次の各号のいずれかに該当するときは、支給しない。
 一 高等学校等(修業年限が三年未満のものを除く。)を卒業し又は修了した者
 二 前号に掲げる者のほか、私立高等学校等に在学した期間が通算して三十六月を超える者
3 前項第二号の期間は、その初日において私立高等学校等に在学していた月を一月(その初日において私立高等学校等である高等学校又は中等教育学校の後期課程の定時制の課程又は通信制の課程のみに在学していた月その他の政令で定める月にあっては、一月を超えない範囲内で政令で定める月数)として計算する。
−−−

 既に報道されているところだが、ここで規定されていることは、
1 公立高校は授業料を徴収しないこと。
2 公立高校以外の学校の生徒には、授業にあてるための「就学支援金」を支給すること。3 その対象は、学校教育法で規定する「一条校」以外には、高等学校の課程に類する課程をおく専修学校と各種学校である。

 いくつかの韓国学校は一条校なので当然対象となるが、ほとんどの外国人学校は無認可か各種学校であるので、議論の対象となるわけである。
 何度か書いたことの繰り返しも含めて、問題を整理しておきたい。

1 制度原則としては、外国人学校とは、その存在している国の教育ではなく、自国の教育と同質の教育を受けるために、所在国の教育法規定に拘束されることなく教育をするために設立された学校である。従って、運営維持は外国人学校の関係国、関係者によって行われるのが原則であり、かつその権利が認められている。もちろん、全く本国の教育と同じということはあまりなく、所在国の文化なども取り入れていることがほとんどである。

2 しかし、移民労働者の子どもの教育については、より複雑な事情にあることが多い。日本ではブラジル人学校がその典型だろう。ヨーロッパでも当初同様な問題が見られたし、現在でも完全に問題が解決されたわけではない。
 外国人労働者を受け入れたくない日本政府、安い外国人労働力がほしい経営者、仕事がほしい外国人という思惑が絡んだところで成立した、「日系ブラジル人・ペルー人」の単純労働の受け入れをしたことが、問題の発端である。
 ヨーロッパにおいて、1960年代から同様のことが起きたわけだが、日本はその「失敗をしない」と宣言していたにもかかわらず、むしろより不明確な対応となっているように思われる。
 当初日本の公立学校に入学、しかし、多くの子どもたちは言葉のハンディで学習についていけない、また、親はいずれ帰国する意思をもっているので、ブラジル人としての教育を望み、ブラジル人学校を設立。しかし、経済的に困難となって廃校が相次ぐ、という事態になっているのが現状だろう。多くの人が援助して続いている学校も少なくない。
 ヨーロッパの移民受け入れ国の政府も、ジクザグのコースをたどったが、結局移民が永住するという前提の政策にたどり着いた。そうすると、外国人学校ではなく、自国の公立学校に生徒を受け入れ、その中で言葉のハンディを解決できるような手段をとることに落ち着く。
 しかし、日本の日系労働者に対する基本姿勢はどうなのだろう。現在のアジアからの介護労働者の受け入れについても、受け入れ後の不都合が生じることが、事前に指摘されていたにもかかわらず、指摘の通りのことが問題として起こっているのは、日系ブラジル人労働者の場合も、少なくとも教育については同じことがいえる。

日本は当初日系ブラジル人の子どもたちを、日本の学校に迎え入れた。しかし、ポルトガル語を解する教師は皆無であるし、ボランティアをつのったが、十分に集まったわけではない。言葉の壁を乗り越えられなかった子どもたちのために、ブラジル人学校を設立するが、成功したものは少なかった。出稼ぎ労働者を送り出した国家に、十分な財政的支援をする余裕はなかったし、まして、子どもたちの親が多額の授業料を出して、充実した教育を実施することは、極めて困難だった。結果として、少なからぬ子どもたちが、日本の学校にも通わず、ブラジル人学校にも通わない状況になった。もし、彼らの多くが日本に定住していく決意であったとしても、世界的大不況で真っ先に首を切られたのが、外国からの出稼ぎ労働者であり、帰国奨励金で必ずしもあてがあるわけではないが、帰国した者も出た。(因みにこの帰国奨励金はアメリカ等で批判的に紹介されたようだ。

 ブラジル人学校は、各種学校もあるし、また、まったくの無認可の学校、日本の教育施設でいえば、小さな塾と同じく、法的意味をもたない存在も少なくない。

3 以上のことから、基本的にいくつかの異なる外国人学校がある。
 韓国学校のように一条校である学校。
 アメリカンスクールやドイツ学校のように、豊かな財政基盤をもって、自律でき、日本の法的規制を受けずに、質の高い教育を実施できる学校。
 朝鮮学校のように組織的援助をうけているが、生徒たちは必ずしも豊かではない学校。
 無認可のブラジル人学校のように、貧弱な教育条件下におかれている学校。
 外国にある日本人学校のように、かなりしっかりとした基盤や援助体制があり、かつ、当該国と協調しつつ、日本的な教育を実施している学校ばかりではないわけである。

 さて、このような中で、では高校無償化という政策がどのようにそれぞれに対して適用されるべきなのか。

 再三書いたように、私は、その学校がある国(ここでは日本)の国内法による学校制度の中に入っている学校だけが、その国の学校と同じ保障を受けられるということであるべきだと考える。朝鮮学校のように、日本の学校に入ることは何ら支障がないのに、民族教育を受けるために、敢えて朝鮮学校を設立維持し、そこで学習している人たちは、民族教育を責任をもって行っている人びとおよび国家がその維持に責任をもつ以外にはありえない。
 しかし、ブラジル人学校のように、日本の学校で学びたくても、言葉の壁が高く、また、日本側で言葉の問題を解決するために、必要な保障を十分することができないために、ドロップアウトしている場合は、やはり、日本の学校においてもバイリンガル教育をもっと進める体制をとるべきだろう。今後も日本で生活していく意思がある人は、そうした方向が好ましいはずである。しかし、帰国することを前提に、日本の教育ではなく、ブラジル人としての教育を日本にいても受けたいという者は、やはり、原則として自立的な学校運営をすべきであろう。(もちろん、そういうことで子どもたちにしわよせすることになるという現実は承知しているし、過渡的措置をとることを否定はしないが。)

 さて、むしろ私が強く関心をもっているのは、現在の民主党が、外国人学校も含めて高校無償化措置、支援措置をとるとしたら、これまでの私立学校行政に対して、根本的な変化をもたらさざるをえないという点である。

 戦後70年代まで、私立学校は国庫補助の対象ではなかった。憲法に違反するという趣旨からだったが、私立学校といえども、学習指導要領に基づいた教育を行っているということが、大きな論拠となって、国家的な教育として運営されているとされ、国庫補助がなされるようになったのである。実際、私立高校もすべて、学習指導要領にのっとった、検定された教科書を使用して教育が行われている。

 しかし、ここで、学習指導要領と無縁な教育を行っている外国人学校に対して、日本の学校と同様な財政支援をする(全体としてではなく、あくまでも高校生の授業料という点であるが。)ということになると、これまでの私立学校補助の論理を根本から覆すことになる。それとも、支援を受けた高校では、日本の教科書を使用しなさいとでもいうのだろうか。
 もし、外国人学校が、学習指導要領と無縁な教育をやっていて、一条校と部分的にせよ同じ財政的補助を受けるとすれば、一条校の私立学校も、学習指導要領にとらわれる必要はないと主張することができるはずである。

 更に今回問題となっているのは、高校の授業料だが、小学校・中学校段階はどうなるのだろうか。高校だけ援助して、義務教育段階を援助しないのは、まさに本末転倒になるだろう。当然そうした要求がどんどん出てくるに違いない。そのとき、政府はどうするのだろうか。もちんろ、高校生よりも小学生や中学生の方が多いのだから、財政負担はずっと大きなものになる。しかも、外国人学校だから、本国の教育を行うわけだし、財政が安定すれば生徒も増えるだろうし、ますます、学習指導要領から自由な、国庫補助学校が増大することになるのである。私自身は、学習指導要領の法的拘束性に反対の立場なので、そのことはむしろ好ましい事態を生み出す原動力となることを期待するが、日本社会がそのままそれを見過ごすとは思えないのである。

 各種学校まで広げたのは、民主党政府の善意だろうが、この善意は、非常に解決しがたい、二律背反的な問題を生じさせてしまうことになるだろう。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
高校無償化法が向かうところ 教育と社会を考える/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる