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zoom RSS わいせつ行為による賠償まで、国家賠償法でカバーするのか

<<   作成日時 : 2011/09/03 16:36   >>

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 9月3日の読売新聞に、憂鬱になるような記事が出ていた。「元教諭のわいせい事件、賠償金を町が肩代わり」と題する記事である。内容は以下の通り。

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 長崎県長与町の元小学校教諭による強制わいせつ事件で、同町は被害児童5人に計1300万円の賠償金を支払うことを決めた。
 今年度一般会計補正予算案に盛り込み、6日に開会する町議会に提案する。
 同町によると、国家賠償法に基づき、3人に300万円ずつ、2人に200万円ずつ支払う。元教諭は在職中だった昨年5〜9月、5人に対し計59回のわいせつ行為を繰り返したとして逮捕され、懲戒免職となった。今年2月に長崎地裁で懲役10年の判決を受け、現在は服役中。
 被害者のうち3人は、刑事裁判に伴う損害賠償命令制度の適用を申し立て、地裁は3月、元教諭に1人当たり300万円を支払うよう命じた。しかし元教諭に支払い能力がないため、町が肩代わりすることになったという。(2011年9月3日14時58分 読売新聞)
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 従来、民事裁判は、刑事裁判とは別で、関連性がなく、そのために賠償をさせるためには、全く別の民事訴訟を起こす必要があり、証拠提出等最初からやり直さねばならないという、被害者にとって大きな負担があったのだが、2008年からの制度として、刑事事件に引き続いて、同じ裁判所が損害賠償訴訟を審理する「損害賠償命令制度」という新しい制度ができた。もちろん、裁判官等は変わるだろうが、証拠等が引き継がれるので、被害者救済が前進したといえる制度である。
 この制度を利用して、有罪になった犯人個人を訴えて、賠償を命じる判決が出たということだろう。この記事に書かれているのは、「元教諭に〜命じた」ということだから、国家賠償法に基づく請求ではなかったことになる。
 ところが、町は国家賠償法に基づき、肩代わりするというのだ。常識的にみて、これは国家賠償法の誤った適用という可能性がある。

 国家賠償法には、ふたつの点が重要である。ひとつは、直接の加害者に責任があって、通常公務員には支払い能力がないから、被害者救済のために、設置者が賠償責任を負うということである。ふたつめは、「公権力の行使」によって生じた被害であるという点である。学校教育の場合には、学校が責任をもっている場面で、教育活動の一環として行ったことが被害を生じさせたという点である。第一の条件にはあっている。本人に支払い能力がないとすれば、設置者が肩代わりするしかない。

 しかし、わいせつ行為は、「教育活動」とはいいがたい。確かに、学校が責任を負っている時間帯に起きたことかも知れないが、本来想定される教師の活動によって生じたという意味であろう。子ども同士のけんかなどの場合には、学校の管理にある時間帯で、学校の中で生じた被害なら、国家賠償法の適用がなされるべきであると思うが、体育や理科の実験、あるいは部活などで生じた被害ではなく、絶対にやってはならない行為(わいせつ)の責任を肩代わりするのは、納税者としては納得がいかない人がいても当然だろう。実際に、記事を読む限りは、民事訴訟は、設置者を被告とする国家賠償法によるものではなく、被告人本人を被告とする通常の不法行為に基づく訴訟であるように理解できる。自らが命じられたわけではない賠償責任を肩代わりするというのは、いかにも妙な話だ。だから議会に「提案」せざるをえないのだろうが。

 もしかしたら、59回ものわいせつ行為をしたというので、被害者やその保護者は、何度も学校側に対処を求め、管理責任を問うていたのかも知れない。そうした管理責任を気にしての対応なのかも知れないとも思われる。しかし、もしそうであるとしたら、国家賠償法には、「求償権」という賠償への弁償が規定されているのだから、元教諭には当然のこととして、管理者に対しても「求償権」が行使されるべきであろう。わいせつ行為への賠償を「税金」で払うなどということは、元来あってはならないことだからである。

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