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zoom RSS 「河野談話」はまっとうな文書だ

<<   作成日時 : 2012/08/29 22:19   >>

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 オリンピック終了後、にわかに起こった領土問題で、メディアやそれに呼応するインターネットユーザーは、急速にナショナリズムを前面に押し出すようになっている。これは日本だけではなく、韓国もそうなので、一種のやらせだという意見もあり、また、それぞれの国内の困難な政治状況の目くらましだという見方もあって、私もそれに近い見方だが、おかしな方に暴走する危険性もある。そして、日本側で目立ってきているのが、「河野談話」への見直し論議、あるいは攻撃である。

 何度も繰り返される「従軍慰安婦」問題であるが、今回、改めて「河野談話」を読み返してみた。率直にいって、極めてまっとうな内容というべきだろう。だからこそ、歴代自民党内閣もこれを容認してきたのだ。まっとうだというのは、全体的にバランスのとれた見方をしているという意味だ。政府のサイトに全文がでているので、ぜひ多くの人に読んでほしいと思う。

 念のため、簡単に要約しておこう。
 政府として、かなり広範囲な調査を行ったという。
 対象機関は、警察庁、防衛庁、法務省、外務省、文部省、厚生省、労働省、国立公文書館、国立国会図書館、アメリカ国立公文書館。
 聞き取りは、元従軍慰安婦、元軍人、元挑戦総督府関係者、元慰安所経営者、慰安所付近の居住者、歴史研究者。
 参考とした文書、韓国製婦作成の報告書、韓国挺身隊問題対策協議会、太平洋戦争犠牲者遺族会等が作成した元慰安婦の証言集。

 しかし、この河野談話を攻撃してやまないひとたちもたくさんいる。河野談話の見直し、撤回を求めるなどという国会議員もいるようだが、そのひとたちは、従軍慰安婦という現実の全体像をぜひ提示すべきであろう。なぜなら、河野談話を攻撃するひと達、あるいは、南京事件を否定するひと達の論法の大きな特質として、全く極端な一点だけを批判して、それですべて崩せるような感覚でものをいうからである。
 従軍慰安婦問題でいえば、「軍や国が関与した強制連行はなかった」という一点であり、南京事件であれば、「30万人などというのは事実ではない」という一点である。「虐殺」というのは、数十人でも十分に「大虐殺」なのだという点を考えれば、30万人じゃないないから大虐殺などなかったという見解が、いかにナンセンスであるか容易にわかるはずだから、ここでは従軍慰安婦問題にしぼろう。

 「談話」では、「募集」の部分で次のように書かれている。

 「慰安婦の募集については、軍当局の要請を受けた経営者の依頼により斡旋業者らがこれに当たることが多かったが、その場合も戦争の拡大とともに、その人員の確保の必要性が高まり、そのような状況の下で、業者らが或いは甘言を弄し、或いは畏怖させる等の形で本人たちの意向に反して集めるケースが多く、更に、官憲等が直接これに加担する等のケースもみられた。」

 ここにも「強制連行」があったなどという表現は存在しない。「本人の意向に反して」という表現がなされており、そして、官憲等が加担するケースもあったと指摘しているだけである。

 そもそも「〜〜はなかった」という論証は、実は極めて難しいのだ。従って、「強制連行はなかった」などとは軽々しくいえるものではないのである。「強制」というのも、人によって、感じ方は相当違うだろう。「なかった派」のひと達は、本当に、慰安婦の募集が、すべての事例において、「紳士的」に行われたと断言できるのだろうか。かなり多数の募集が必要であり、かつ、戦場に赴くという危険な状況に身を置くのだから、躊躇する女性を強引に勧誘した事例があったと考えるのが、自然であろう。
 「軍の関与」は、記録によって確認されているようであるし、そもそも戦場での「慰安」行為のための人を連れて行くのであるから、軍が関与しなかったと考えることなど、とうていできることではない。
 「奴隷状態」はどうか。
 かなり報酬がよかったことをもって、奴隷状態ではないと主張するのであるが、これもかなり無理があるといえる。そもそも、日本軍が劣勢になって以降は、兵士たちも酷い状況に陥っていたのだから、そこにいた女性達が安穏とした生活を送ることができたと考える方がおかしなことだといえるだろう。

 しかし、こうした個々の論点は、基本的には重要なことではない。瑣末なことで「なかった」などというひと達のモラルが極端に低いことは明らかであるから、むしろ、何故彼らの主張が、国会議員なども含めたひと達によって共有されるのか、という点と、問題の本質を明確にすることが大切であろう。

 従軍慰安婦問題を否定的にいうものは、「愛国心」が高いひとたちであるようにみられているが、じつは「尊敬される」ということについて、非常に意識の低いひとたちであるように思われるのである。本当のところ、彼はは極めて愛国心が歪んでいるひとたちというべきだろう。人はもちろんであるが、国家にしても、尊敬される者は、間違いを率直に認め、謝罪し、反省して、再び同じ過ちを侵さないように努力するものである。ワシントンの桜の木の逸話はそのことを表している。

 従軍慰安婦という存在が、実際の慰安婦たちに大きな傷を残したことは、否定しようがないことである。そのことを歴史的にきちんと見据えることは、絶対に必要なのである。
 しかし、だから、日本の行った従軍慰安婦の状況を、他から切り離して見ることもまた、正しくない。日本をこの問題で非難しつづけてやまない韓国だって、ベトナム戦争において、似たようなことをしており、それだけではなく、かなりのベトナム人を虐殺したと言われている。アメリカでは、ベトナム反戦運動がおき、さまざまなアメリカ軍の残虐で不正な行為を暴くひとたちが出て、ベトナム戦略を変えさせたわけであるが、韓国ではどうだったのだろうか。多くの指摘によれば、韓国はかなり長い間、ベトナムにおける残虐行為を無視してきたという。さすがに近年、韓国内部から事実を見つめようという運動も起きているようだが。

 アメリカはどうか。最近、山田盟子『ニッポン 国策慰安婦 占領軍慰安施設・女たちの一生』(光人社)という本を読んだが、これは、アメリカが戦後日本を占領したときに、アメリカ政府の日本政府に対する要請によって、慰安所が設置され、多数の日本人慰安婦が募集され、従事したことを、当事者たちのインタビューを含め、克明に事実を明らかにしたルポルタージュであるが、アメリカなどは、もっとずるい、汚いやり方で同様なことを行っていたのである。このことは、戦後の文学のなかで、何人かの作家によって、小説として発表されてきた。その代表が、松本清張の『ゼロの焦点』であろう。
 したがって、こうしたことは戦争につきまとう影の影の部分であるという認識をもつことが必要であろう。だから、仕方ないということではなく、だから、戦争は決してやってらならないという意味なのである。
 慰安婦の問題は、ある意味どの戦争であることであり、それぞれがどのような形態をとったのかを明らかにすることは大切であるが、それはあくまでも、自らの問題性を糊塗するためではなく、再び問題を起こさないために明らかにするのである。

 おそらく、日韓でエキサイトするのは、ここに補償問題が絡むからであろう。しかし、この点については、最終的に決着しているかどうかは議論の余地があるが、とりあえず、国家と国家の間では結論が出て、実施されていることであることは明白である。制定過程に問題がある条約であったことは間違いないが、とにかく国家間の条約として、日韓条約が結ばれ、そこに個人保証は韓国が行うこととして、韓国という国家に日本は賠償をしたのであるから、少なくとも韓国の慰安婦だった人は、韓国政府に補償を求めるのが筋である。もしそのことを無視して、そんな条約は無意味であるというならば、韓国という国家は、国家間の条約、最も思い契約を簡単に無視する国家だということになる。
 オリンピックにおける韓国の姿勢を見ると、そういう側面が何度かみられるのだが、韓国にとって決して名誉なことではないのではなかろうか。
 竹島領有に関するスローガンを、試合後に観客に見せながら走ったサッカー選手の行動について、意図的なものではなかった、とか、感情的にやってしまった、とか弁明しているが、韓国人は、意図的なものでなければ、オリンピック憲章に反することを平気でするのか、あるいは、感情的にやったことは問題ではないのか、あるいは、感情的になると何をするかわからないひとたちなのか、というような評判をとってしまうではないか。
 こういう問題を起こした場合には、潔さが必要だろう。

 国家補償の問題は、あくまでも韓国政府がまず可能な限り補償をして、全体としての日本からの賠償額が不足するということであれば、再交渉ということもありえないことではないと、私は思うが、全くそうした経過を経ずに、日本政府に対する補償を求めるというのは、あまりに国際的なルールを無視しているといわざるをえないだろう。

 今政治家たちが、平和を危うくするように、相手にけちをつけることで、自己満足感をえようとしている。政治家の役割は、誤解をとき、平和を維持することで、国民の利益を守ることであるはずである。

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